これから必ず来る大不況に対する備え方
「2020年以降に不況が来るってずっと言われていますが、中川さんはどう思われていますか?」-ただいま新しいキラーサービスを絶賛構築中のある社長と雑談しているときにそう聞かれました。
「結構大きいのが来ると思いますよ。ちょうどよかったですね。」と私はお答えしました。
まず不況がくるかどうか? そりゃ来ます。日本は長らくぱっとしないものの世界的にはこの十年ずっと好景気が続いていますが、上がったものは必ず下がります。
それは「過去そうだったから」ということではありません。ちゃんと理屈があります。
不況というのは多くの場合金融システムが破綻して起こります。私は金融の専門家でもなんでもないですが、金融の本質、そして人間心理の本質を考えると、金融システムとは壊れて当然のものであることがわかります。
まず人間心理からいいますと、人というのは「過剰」を求める生き物です。過剰を消費して本能から湧き上がる欲望を満たしています。そう考えれば「大人買い」や「断捨離」が気持ちいいのにも納得がいきます。
そして、金融の本質とは何かというと、それは「信用」です。お金の貸し借りなんかはまさにそうですよね。相手を信用するからお金を貸せるわけです。投資もそうで、金融機関は金融商品というまったく架空のものを、さも信用があるように見せかけて販売するのです。
そして、実際のモノであれば過剰につくれば市場で余ってくるためどこかでブレーキがかかるものですが、金融商品なんて単なる「記号」ですから、その「信用」さえ維持できればいくら作っても余ることなく買い支えられていくことになります。
「信用」さえ演出(捏造)できれば金融商品は売れ続けて値が上がりますから、金融機関にはその信用を「過剰に」演出する動機づけがはたらきます。「これからさらに上がる」という情報を市場や顧客に与え続け、実態のない行き過ぎた「信用」を顧客に売りつけていくわけです。昨年発覚したスルガ銀行の不正融資などはいい例です。
そして、信用の過剰な(不適切な)捏造が実態とあまりに乖離した結果、それを支えきれなくなりバブルがはじけることになります。これは避けられません。ただそのタイミングが早いか遅いか、だけの話ということです。
つまり、好況も不況も必ず起こるのです。言うなれば朝も昼も夜も必ず来るようなものです。それとの違いは、好況が長いか、不況が長いか、その違いがあるだけです。
好況や不況は必ず来る。それ自体にいいも悪いもありません。そういう市場構造に我々は身を置いているのですから、それを前提に商売を考えていけばいいということになります。
ではどのような考え方を持てばいいのか、ということになりますが、これはシンプルです。
好況のうちに(不況を迎える前に)次の商売のネタを仕込む。
ということです。
つまり、いまのような「そろそろ不況が来そうだな」と言われているときには必ず次の商売のネタを仕込み、不況が来る前に芽を出させるということです。
その「新しい芽」を本格的な不況が来る前に出しておかないと、不況時にはただ既存事業がシュリンクしていくのに耐えることしかできなくなります。そうなると、せっかく一緒にやってきてくれた社員に辞めてもらうというような、経営者として不本意な結果になる可能性も高いわけです。
しかし、逆に不況になる前に新しいネタを仕込んでいけば、不況に転落してもそのビジネスを育てる活動に社員を割り当てることができますし、売上の補填にもなります。そうして不況時に新しいビジネスを仕込み、ある程度軌道に乗せておけば、そのあと好況が来た時には、一気にそのビジネスを伸ばして刈り取りができるのです。
しかし実際はこれと逆の動きをしてしまう経営者も多いです。つまり、不況が来ると言われているときには、「それはマズイ」ということで気持ちも縮こまり、新しいことは考えないし既存事業も無理をしない、という姿勢をとる方が非常に多いわけです。
しかしそうなると、前述のとおり不況時には既存事業はシュリンクしていきますし、不況に入ってからでは新しいことを立ち上げるのも難しくなります。それで、やっと不況を脱したときに新しいことを考えようとしますが、好況になってから着手しても出遅れてしまって刈り取りしきれないという悪循環になるのです。
これは株式投資などの投資の考え方と同じです。みんなが儲かるときに仕込んでも遅いのです。大衆とは逆張りでいかないと利益を市場で勝つことはできません。実業もこれと同じで、これから不況になると予想されるいまだからこそ新しい仕込みをする必要があります。いまから事業の「上昇エンジン」を仕込んでおくことで、不況時でも沈まずに浮遊し続けることができるのです。
御社は不況になっても社員を忙しくさせるだけの「ネタ」を仕込んでいますか?
いまのうちに次なる展開に着手し、つねに事業が上昇していける体制をつくっていきましょう。
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