人工肉とビジネスチャンス
このコラムの読者にも、ごく最近の話として人工肉の話題に触れたことのある方が増えてきているかもしれません。実際にアメリカではBurger Kingがこの8月からImpossible Foodsという会社が売り出した人工のミートパテを使ったImpossible Whopperという商品を売り出してちょっとしたブームになっていますし、Beyond Meatというスタートアップが売り出したBeyond Burgerも大きな話題になっているのだそうです。
環境ビジネスコンサルタントの私がいきなり人工肉ハンバーガーの話題を始めると、「ついに西田もネタ切れか?」と思われる向きがあるかもしれません。実際は全く違いまして、先ごろスウェーデンの女子高校生が切れ味鋭い演説で世界の耳目を集めた気候変動サミットでも注目された、温室効果ガス削減に関する大きな可能性の一つが食肉供給であることによるものです。
世界で排出されている温室効果ガスのうち、およそ15%は畜産業によるものであるという統計は、特に日本ではあんまり関係ないと思われているかもしれません。でも、たとえばアメリカでは毎年240万頭もの牛が食肉加工用に出荷されているのだそうです。この牛が出すゲップが温暖化に及ぼす影響がバカにならないのです。そこで今注目されている技術が人工肉、すなわち植物を肉に似た素材へと加工する技術なのです。
アメリカでは環境対策というよりむしろ健康志向の人を中心として売り上げが伸びているそうですが、仮に食糧生産の見直しで温室効果ガスの削減ができるとしたら、そこには一定の市場評価がついて回るのではないかということは申し上げられます。
具体的には社会的インパクト投資が評価する基準、たとえばTCFD(The FSB Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の求める基準を満たす企業行動として評価されるものなので、マクドナルドやバーガーキングなどの大手は特に、投資家に対する意識から温室効果ガス削減につながる取り組みとして選好的に採用を増やすのではないか(あくまで「売れれば」という条件が付きますが)と思われるわけです。
だとしたら、旨味の調整や味付けなど、日本企業が得意とする部分で市場開拓の可能性があるのではないでしょうか?なにせカニカマではほぼ本物、みたいな商品を作ってしまった国ですので、日本企業にとって「ほぼ牛肉」みたいな味付けを考えることは十八番ではないかと思うのです。
現状、アメリカの人工肉は味の面で「それなりの」評価を得てはいるようですが、食べ始めに「本物の肉みたい」と思っても、食べ終わるころには「やっぱり違う」と言われる程度の差がまだ克服できずにいるようです。この隙間にこそ日本の技術が入れるチャンスがあるのではないか?私はそんな風にマーケットを見つめているのですが。
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