多店舗化の罠を知る
店舗ビジネスにおける「社長(店長)とスタッフの関係」について、創業当初は1店舗だけで社長もスタッフも距離が近く、部活のようなノリで濃いコミュニケーションが取れますので、一人一人を細かくフォローできます。飲食を共にする時間も多く、まさに「同じ釜の飯を食う」状態で、信頼関係も強く結びつき、同じ目標に向かって家族のように団結し、邁進していきます。
さてその後、1店舗目が成功すると、2店舗目の出店、そして3店舗目…と店舗ビジネス経営者の方であればわかると思いますが、立て続けに出店することが「決まりごと」のように誰もが同じ多店舗化への道をたどります。
1店舗目が上手くいくと、その絶対的な自信から自分自身の多店舗化に対する欲も当然出てくるうえ、周囲もほっときません。同業者はもとより、付き合いのある金融機関や不動産業者、ひいては顧問税理士など、甘言を弄してあの手この手で出店へ誘い込みます。
多店舗化自体は全く悪いことではなく、むしろ店舗ビジネスにとっては必須の戦略です。しかしながら、単に1店舗目の延長線上で行けるだろう考えていると、速攻で足元をすくわれます。
多店舗化が失敗する最大の要因は「理念が薄まる」ことです。冒頭にも書いたとおり、1店舗目は社長自身が店に立ち、お客様への対応を行い、スタッフの教育も行います。しかし、店舗が増えると物理的にも1店舗目と同様の仕事はできません。
最初から多店舗化を目指し、組織と仕組みを作っていたとしても問題は起きます。それなのに大半の人が何も考えず多店舗化し、社長を始めスタッフ全員に負担がかかり、その負担の割にお客様は増えず、リピートせず、結果売上は取れず…という状況に陥ります。
「貧乏暇なし」の言葉通り、忙しさは天井知らずになる一方、会社全体の業績は下降し、1店舗だけの方が利益は多かったという皮肉な結果となることが非常に多いのです。
こうならないためには、「理念が薄まる」ことを避ける必要があり、その一番の有効策は「コミュニケーション頻度を高める」ことです。忙しい、業績が悪いときこそ時間を取ってスタッフとのコミュニケーションを優先させる必要があります。
「理念」とは「社長の思い」であり、単に経営理念を文章化して朝礼で読ませるくらいでは浸透するはずがありません。顔を突き合わせて会話し、伝え、それを何回も繰り返すことでようやく浸透していきます。
1店舗目での濃いコミュニケーションまでは無理かもしれませんが、できれば週に1回、少なくとも月に1回は店舗内ではなく、場所を変えミーティングを行うべきです。そこでは社長自身の将来の展望や、スタッフの仕事に対する思いなどをざっくばらんに話し、お互いの価値観を共有することを目的とし、売上等の話は最小限にとどめておくとよいでしょう。
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