売上を倍増させるネーミングリニューアル戦略
商品の「ネーミング」だけでヒット商品に生まれ変わることがあります。「そんなもの?」と疑問に感じられる方もいらっしゃるでしょう。また、頭では何となく理解されている方もいらっしゃるでしょう。しかし中小企業においては実際のところ「ネーミング」にこだわってご商売できている会社は案外少ないものです。
実りの秋、わたくしの目の前に買ってきたばかりの「みかん」があります。スーパーで買った袋入りみかんです。袋には簡素な印字シールが貼ってあります。そこには「みかんS 宮崎産」と書いてあります。一方、もう1袋、地元農家で買ったみかんがあります。こちらにも印字シールが付いています。
「\秋の収穫祭/濃くみかん 世田谷育ち 」
「みかん S 宮崎産」
どちらが美味しそうに感じるでしょうか。同じ価格だとして、どちらが欲しくなりますか?
わたくしが住んでいる街はカフェの激戦区です。中でもトレンドであるコーヒー豆を焙煎して提供する店が4店あります。となり街にはロースタリー&カフェの先駆者「堀口珈琲研究所」が鎮座しています。こうした高付加価値店のほか、ドトールやスターバックスが2店、コンビニエンスストアが5店あります。コーヒーをめぐっては熾烈な外部環境です。
生活者目線でみれば、この数年でどの焙煎カフェもレベルをあげ、味と質の良いコーヒーが手に入るようになりしまた。コーヒー好きの友人たちにお気に入りの店をヒアリングしても、大抵の人は「特別“お気に入り”のお店ってはない。なぜなら、どこの店も魅力あるから、、、全部好き」と言います。
例えばあなたに「あなたはどこのコーヒーが好きですか?」とか、イタリアンであれば「どこの店がお気に入りですか?」といった質問をすれば、心の中で「ここの店もあの店も、あっちも・・・」と次々とご自身の中にあるデータが出て「どこって、ひとつだけ取り上げるのってむずかしい、、、」と迷われるのではないでしょうか。イマドキどこの店も素敵ですよね。
日々、“情報の洪水”の中で暮らすわたしたちにとって「情報」は価値ではありません。情報とは「産地」であるとか「サイズ」であるとか「焙煎方法」「〇〇さん」であるとか、そうした表示は今や「当たり前」です。ネットで検索すれば出てくることに価値を感じたりしません。むしろ直感とか感性とか本能で選ぶ時代です。「お店をパッと見て」「接客の感じが良かった」「試飲が良かった」、商品に寄れば「かわいい!」「色がきれい」「目立つ、映える」「きもち悪い〜」といった「直感」とか「感覚」で入店したり、手にとって買い物する時代です。
ある焙煎カフェでは、手書きの黒板POPに4種類の季節限定コーヒー豆を紹介していました。
そのネーミングは
- 秋の収穫祭ブレンド〜新収穫豆〜
- 秋香り ブラウンハニーブレンド
- 秋のこく豊か ヨーロピアンブレンド
- こってり 秋の完熟ブレンド
という4種類です。たったこれだけのことです。ですが、他社ではほとんどが、「秋ブレンド エチオピアモカ」といった「産地名」との組合せがほとんどです。
4つのネーミングをイメージしてみてください。おそらくコーヒーという嗜好品がお好きな方なら、スイーツもいっしょに食べたくなるのではないでしょうか。「新収穫」「ブラウンハニー」「こく豊か」「こってり」「完熟」といった、食に関する言葉を織り込んでいる点が、刺激のツボになっています。地域や店名の名前を入れた「秋のケニアブレンド」といった名前と並んだ時、テンションがあがるのはどちらでしょうか。買い物の主役たちはどちらが欲しくなるでしょうか。
ひるがえって、自社ビジネスを点検しましょう。ライバル店も大手量販店も、海外のブランド店も、どの店も商品サービスを磨き上げています。「パッケージデザインが素敵」とか「ネーミングが面白い」とか「見たことがない」「目新しい」「意味がわからない」「わけがわからないけれど、何だかスゴイ!」と感じさせたら、勝ちです。「わかりやすさ」や「説明的」、「情報量が多い」ということにお客様は価値を感じません。
この傾向は10月の増税後にますます強まってゆくでしょう。なぜならお客様は「恐れている」からです。「お金をつかう」ことに恐怖しているからです。お金をつかいたくないのに、「何か買わされるのではないか」という恐怖で震えています。
事実、朝の情報番組、病院や美容室で手に取る雑誌をチェックしてみてください。買い物の主役である主婦の方たちがよく読む雑誌で、オレンジページ、Mart、サンキュ!、レタスクラブ等です。誌面には「節約」「倹約」「貯蓄」といった言葉や企画が踊っています。100円ショップのアイテムを使った節約方法が大人気です。また、雑誌の後ろの方には、ファイナンシャルプランナーなどの専門家による「貯め方」や「投資術」についての記事が必ずあるはずです。つまり、お金を使うことへの「恐怖病」が拡がっているのです。ゆえにネットショップはますます活況になります。理由は気持ちが「ラク」だからです。生活者にとって対面しない買い物は気楽です。お金をつかうことが怖くなったら、離脱すればいいのですから。対面と違って逃げやすいのです。
お客様がお店に足を運んできてくれること自体が貴重なチャンスだ、ということをもっと痛切に感じてサービスの質を高める必要があります。ネーミングとはサービスのひとつです。接客の笑顔と同じです。いかがでしょうか、御社のネーミングは「みかんS」でよろしいでしょうか?言葉はイキモノでありナマモノです。言葉はすぐに古くなります。ですが、焦りは禁物です。今一度しっかりとネーミングリニューアルを仕組み化しましょう。プロじゃなきゃネーミングは作れない、というのは思い込みです。必ず自社でできるようになります。ネーミングリニューアルでヒットを飛ばせますが、そのやり方が社内に蓄積されていなければ、ヒットは一度キリとなります。永続させるためは仕組みが必要不可欠です。
お金をつかうことを恐れているお客様が目の前にいっしゃいます。語れば語るほどお客様は震え上がります。いま、お客様が求めているのは恐怖からの脱出です。お客様の想像を裏切る、想像を超えてしまうネーミングに出会いたいのです。物語にひたれるような、感覚を揺さぶる可愛くて、甘くて、セクシーで、たのしいネーミングにしましょう。同時に見せ方も工夫しましょう。売り方もネーミングに合わせて変えてゆきましょう。
そしてお客様を勝たせてあげるネーミングにしましょう。お客様を買い物の恐怖から救って差し上げるビジネスを展開しましょう。お金をつかう恐怖に打ち勝っていただき、御社商品サービスでより楽しく豊かになる未来を提供しましょう。買い物の喜びに今再び目覚めてもらいましょう。古いやり方や古い価値を脱ぎ捨て、五感を揺さぶる商品リニューアルを実践して、お客様といっしょに新たな未来を作るチャンスの時です
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