人の力を引き出すには独特のチャネルがある
私はどんな人にもその人独自の強みや仕事に向けるモチベーションの源があると考えます。ところが本人さえもそれに気づいていないことが多いため、「あなたの強みややりがいはなんですか?」と唐突に聞かれても、答えに窮することになります。
人の力を引き出すには、今まで気づかなかった独特のチャネルがあります。チャネルというとわかりにくいのですが、この方角から刺激を与えるといい反応を得やすいというツボみたいなものです。
それはコーチングやカウンセリングの技法にも通じるのですが、こういうやり方は今までの指揮命令系統の中ではあまり活用されてきませんでした。あるいは意識の高い人が試してみるのですが、実効性に乏しい、もしくは成果を出すまでに時間がかかりすぎるということで、あまり浸透しなかったのではと思います。
特に今日明日の業務に追われる中小企業では、手っ取り早く成果の出る方法をとりたい気持ちになるのは当然です。それで過去に成功した方法を繰り返すわけですが、社内外を取り巻く環境が変化しているので、同じ成果を導き出せるとは限りません。悪い場合は、成果を出す方法が、誰かの多大なる負担の上に成立していたりして、俯瞰的にみるとかなり危ない状況であったりします。
人の力を引き出すという行動を企業が取りにくいのは、その結果が予測しにくいことにあります。従来型のスキルや技術を教える研修であれば、何を体得すべきか、何ができるようになれば良いかは明白です。ところが、人の力を引き出すと言った途端に、実はその人がどんな力を持っていて、それがどんな風に会社に役立つかもわからないことが多く、従って、「信じるものは救われる」の世界に入っていきます。いつ、どこで成果が出るかもわからない方法を信じて、まい進するしかない。一言でいうと、怪しいわけです。
大手企業はこう言ったことに人材教育の一環として取り組むことができます。ところが中小企業が、ここだけ切り出して取り組むとなると、時間的にも資源的にも制約が大きく、思うようにはいきません。でも今までと同じことを繰り返していては、どうもまずいことになりそうです。
解決策は、業務の中に人の力を引き出す仕組みを取り込むことです。従来型の研修のように、実務と切り離して理論やケースを学ぶのではなく、目の前にある切実な問題を題材に人材育成に取り組むと言うことです。と、言うと、この考え方、どこかで聞いたことありませんか? 「それ、OJT、ですよね?」という声が向こうの方から聞こえてきます。
OJTとは、どちらかと言うと実務に根ざしてスキルを学ぶと言う趣があります。ところがこの話はどちらかと言うと、気づきとかマインドセットとかいう、これまであまり重視されず、扱われて来なかった話になります。まだまだ馴染みのない領域ですが、10年単位で見れば、主流になってくる兆しはあります。ぜひ、ご一緒に、今から取り組んでいきましょう。
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