社内の慢心こそが会社の危機
「御社は、今後、〇〇という危機に直面する可能性があるのではないですか?」
「いやー、これまでもそんなことにはなりませんでした。可能性は低いでしょう。」
「でも、××は十分に可能性がある。そうなる前に手を打たないと・・・」
「いやー、そうなっても、こちらの分野では通用するので、まだ大丈夫です」
先日話した、ある社長との会話の一部です。
ご相談を受け、業務内容を聞いたところ、かなり危うい内容でした。直ぐにでは無いにしても、今から考え動き出さないといけない状況です。そこで、その危機に気づいてもらうためにいくつか情報を投げかけたのですが・・・返ってきたのは、冒頭のように危機情報の否定ばかりです。
実は、このような危機情報の否定は、衰退企業に特徴的にあらわれる兆候です。
既に衰退し始めている企業やこれから衰退していく企業が、危機情報に接すると、なかば反射的に否定します。
「いやー・・・」「でも・・・」「しかし・・・」
まず、否定、反論の言葉から始まります。仮にこちらが反論を否定すると、さらに否定や反論が続きます。正否を明らかにしたくて情報を出したのでは無く、可能性に気づいて欲しいだけなのですが・・・可能性に目を向けるより、まず、否定しようとしてしまいます。
そして、最後には、決まって次のセリフが出てきます。
「まだ、大丈夫」
この「まだ大丈夫、まだ大丈夫」というセリフは、衰退企業の経営者と社員に特徴的に表れる危険なセリフです。特に、経営者からこの言葉が連発されるときは、会社全体に「まだ大丈夫」という気持ちが蔓延しているときで、相当に危険な状態です。
ここで我々が忘れてはならないことは、「これまでのビジネスが、未来永劫、通用することはあり得ない」ということです。経営環境は常に変化しており、これまでのやり方は、いつか通用しなくなります。「大丈夫」ではなくなる時が必ず訪れるのです。
「大丈夫。そのときが来たら、きちんと対処します」
「まだ大丈夫企業」の社長は、きっとこう反論することでしょう。
このように、危機情報は、よほど注意していないと、とらえることができません。人は、安心したい生き物なので、知らず知らずのうちに、危機情報は、見てみないふりをしたり、否定したりして、危機としてとらえようとしません。冒頭の企業が良い例です。目の前に危機情報が提示されても、ほぼ反射的に否定してしまいます。
危機情報を危機としてとらえるためには、それこそ、日ごろから目を光らせて、わざわざ危機を探して回るくらいのことをしなければならないのです。
伸びる企業は、常に危機を探しています。そして、危機の裏にあるチャンスにも目を向けています。
一方で、衰退企業は、危機から目を背けます。当然、そこにあるチャンスに気づくこともありません。こうして本当に衰退してしまいます。衰退企業は、いよいよ大丈夫ではなくなった時、ついに動き出すかと言うと、そうはなりません。いよいよ大丈夫ではなくなった時、衰退企業の経営者と社員のセリフは、「まだ大丈夫」から、次のセリフに変わります。
「もうだめだ」と。
「何とかしよう」を通り越して、あきらめてしまうのです。
御社のビジネスは、まだ大丈夫ですか?
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