隣の芝生が青く見えるにもほどがある。
ある企業で新規事業を始めるから相談に乗って欲しいと言われてお邪魔しました。相談は連携先としてどこを選んだらいいかという内容。このプロジェクトを担うリーダーが新規事業の目新しさを内外にアピールしたいので、それにふさわしい連携先を選びたいという主旨のようでした。
「連携先を選ぶのはいいんですが、社内のメンバーはどういってるんですか?」と尋ねると、「いやまだ相談してない」と。話を聞いていくうちに、新規事業で検討すべきコンセプトとかなんとかいう重要なことがすべて後回しになっていて、とにかく連携先を決めなければと焦っている様子。
「でも、連携先に頼らなくても、当面、社内のスタッフで回せますよね?」と重ねて尋ねると、「いや、みんな忙しいから…」。
リーダーにとってみれば、新規事業を上手に回せる連携先をうまく選んで企画を固め、それを社内に下ろして実働部隊たる社内のスタッフにやってもらうのが一番うまくいく手段というお考えなのでしょう。
私の反応は「もったいないな」です。
新しいことに取り組むときは、社内人材の力を引き出す最大の機会です。やったことのないことをやるのだから、みんなで知恵を集めて、何をやらなければいけないかから検討しないといけない。まさに多様な視点が役に立つ絶好のチャンスです。
そこに外部の見栄えのいい出来合いの方法や企画を導入すれば、一見滑り出しよくスタートが切れるのでしょうが、実働部隊たるスタッフのモチベーションは最低。やる人の気持ちがのっていないのですから、仏作って魂入れず状態。行く先は見えています。
そう、確かに、見栄えのいい外部の組織は、成功を運んでくるような気がします。きっとノウハウもお持ちでしょうから、失敗も少ないでしょう。でも、気をつけて下さい。いつだって「隣の芝生は青く見える」のです。
「でも、うちの社員にそんな能力はありません…」。こんな心の声も聞こえてきます。もしかしたら本当に能力がないのかもしれません。でも、そもそもそういう機会を与えたことはあるのでしょうか。
ちょっと話が違うのですが、ベンチャー企業に一体感があるのは、誰もがやったことのないことに全員が知恵を絞って対応するからです。ぎりぎりの忙しさのなかで、意外な能力が引き出されたりします。もちろんトラブルや感情的な対立も生まれるわけですが、ゴールが共有されていれば乗り越える手段も明確です。
そう考えると、会社のなかで今まで直面したことのない課題に直面した時に、外からリソースを持ってきて解決しようとするのか、課題解決を人材育成の機会と捉えて違う角度から取り組むのかで、その後の組織の有り様がだいぶ変わるような気がします。隣の青い芝生を使うより、うちの芝生を青くすることに力を傾けた方が得策、なのです。
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