ビジネスの原点は常に○○○ものを提供し続けること―社長の役割は△△隊長であり続けること―
私がご提案し続けている、社長による「情報発信」は、一連の企業活動の中でポジショニングするとすれば、販売促進部門の一部、広告宣伝活動に類するものということになります。
日本企業、特に地方の中小企業においてはこの部門が極端に弱いため、多くの企業業績が伸び悩んでいる要因の一つでもあるのです。その結果、中には廃業或いは破たんの危機に瀕している企業も出てきています。
ところで、企業活動に不可欠ともいえるこういった部門について、なぜこれほど脆弱で、必要なノウハウを身につけることができないでいるのでしょうか。その原因を直接追及する前に、私は企業活動の原点である「営業部門」の活動状況に注目したいと思います。そうすることで、そこからその原因を推し量ることができるのです。
営業力の弱さを追求することが、地方の中小企業活動が不振に陥っている要因を解明することにつながる・・・そのことを私が20年ちょっと前、地方に帰り税理士事務所のトップとして多くのクライアントさんと接することになったとき発見しました。当時、地方企業の現状を見たとき、このことに気がつき驚かされたのです。
いったい何を発見したのか・・・それは「営業活動」そのものがほぼ存在しない、という事実でした。
何故そんなことになっていたのでしょうか。
理由は簡単です。それまでの昭和の時代は、長い間売り手市場で、こちらから頭を下げて営業活動をする必要がなかったのです。
すでに時代は変わりつつあったものの、長く続いた売り手市場有利の残像のイメージは大きく、ほとんどの企業が適正に舵を切ることができないでいたのです。
さらに、営業の必要性を感じさせなかった要因として、地縁血縁社会ということが大きく影響していました。
地縁血縁社会というのは、通常の営業活動というものを必要としません。取引相手はこっちの知っている人間であり、向こうもこちらのことをよく知っています。それも1代に限ったことではなく、2代3代に渡ってお互い知っているということも珍しくありません。
こういった社会では、営業活動といったものは特に必要なく、あらかじめお互いがお互いの求めていることを了解している、ということが前提で経済取引が成立します。
改まって「売り込む」という行為は必要ないのです。
そもそも営業活動というのは、「常に新しい何かを提示、提供する」という行為が伴ないます。
新規の顧客にとって我が社は新しい取引先です。こちらの会社も提供する商材も先方にとって初めての存在となります。また、既存顧客には新しい商材や新しいサービスを紹介します。新しい商品がなくても何か新しい情報を提供することになります。
つまり、営業活動というのは、新規顧客であろうが既存顧客であろうが、何か常に「新しいもの」を提供し続ける行為と言っても過言ではありません。その営業活動は、企業活動の根幹をなすものですから、タイトルの「ビジネスの原点は常に○○○ものを提供し続けること」の○○○には「新しい」という言葉が入るのです。
そしてこれが、地方企業が不振に陥った大きな要因の一つなのです。
つまり、地方企業には、これといって「新しく」提供するものがなかった。
また、常に「新しく」何かを提供し続けなければならない、という発想も気概もなかった、ということなのです。
いったいどうしてそんなことになったのでしょうか。
それは、前述のようにそれまで充分、地縁血縁社会による互助作用が働いていたからにほかなりません。何か踏み込んで、わざわざ嫌がられるような「営業活動」などする必要などなかったのです。地縁血縁社会における最低限の必要性を突破してまで、営業活動を実行することは、「何をガツガツしているんだ!」と敬遠されたのです。
しかしこれは、後で大きな弊害を生むことになります。
そして、この弊害というのは現代を生きる企業にとって、その事業活動に致命的と言ってもいいような大きな影響を及ぼすのです。
その第1は、何といっても顧客の減少の影響をもろに受けるということです。
昭和後半から平成にかけての地方の過疎化はすさまじく、日本中限界を迎えた集落だらけになりました。そもそもそれまで営業活動に真剣にとり組んだことなどなかった地方企業は、そのこと(人口減少)によって、年年歳歳減少する売上に何の打つ手もありませんでした。人口減少によって自然減せざるを得ない売上をカバーする営業の手立てを何も持たなかったのです。
弊害の第2は、営業活動を怠っていると、変化の激しい世の中の動きについていけなくなる、ということです。
顧客のニーズは常に変化します。それに応じて、商材やサービス、売り方などを、こちらもアップデートさせていかなければなりません。しかしながら、地縁血縁社会における甘い取引関係においては、どうしてもこちらの都合を優先させたくなります。
つまり「今までこれでよかったんだから、これからもこれでいいじゃないか。」という甘えが、どうしても表に出てしまうのです。
世の中の変化、ニーズの変化に対して対応が甘くならざるを得ないのです。そして、その甘さはやがて事業に大きなマイナスをもたらします。
弊害の第3は、第2の内容と関連するのですが、顧客に対して甘い対応をしていた結果、「販売促進」というものに関しても、そのノウハウが磨かれるということがなくなるということです。
「販売促進」というのは、もともと購入の意思の弱い或いは無い相手に対して、踏み込んでこちらの情報や意図を伝えるものです。その内容や伝え方は、先述した「時代の変化」に対応したものでなければなりません。そうでなければ、世の中に注目されることもなければ、相手に大した影響を与えることもできないのです。
ここで申し上げた「販売促進」に、私がかねてよりお勧めしている「情報発信」や広告宣伝が含まれていることは言うまでもありません。こうやって書いてきて「販売促進」が、いかに営業活動と密接に結びついているか、お分かりいただいたと思います。
中小企業の場合、常にこの営業活動の第1線にいるのが経営者、即ち社長ということになります。営業における様々な役割を社員に与えていたとしても、トップセールスの担い手としてのポジションは社長にしかできません。
つまり、今回のタイトルにある「社長の役割は△△隊長であり続けること」の△△は「切込隊長」ということになります。
中小企業の場合、社長が切込隊長でなければ社員はついてきません。
それプラス「情報発信」戦略まで担っていただきたい、というのが私の経営者に対する持論です。大変なように思えますが、それが中小企業にとって最も効果的だからです。
営業から販売促進まで・・・中小企業経営者にとって負担の大きなポジションではありますが、それだけにやりがいのある仕事でもあります。いずれも戦略的思考で前向きに取り組んでみてください。
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