【感性を高める】一流の事業承継
事業を継がせるタイミングは、早すぎないほうが良いと言うのをご存じですか? ましてや我が子可愛さに、会社を社会人経験の浅い状態で入社させるなど言語道断。本来は、30歳か40歳ぐらいのタイミングではじめて入社させたぐらいの方が正解のケースも多々あります。
こんにちは、茶人・小早川宗護です。私は茶道裏千家の師範として30名の直弟子を指導しつつ、最もハイレベルな茶会、茶事をビジネスとして展開しております。
本来、スポーツにしろ技芸にしろ伝統工芸にしろ、はたまた芸道にしろ、その大半は幼少期からの訓練が必要です。しかし茶の湯に限っては、ある程度年齢が行って、人間的に熟しはじめてからスタートした方が良い、と言われています。なぜそのような差が生じるのでしょう。
実は茶の湯は細かい技芸を必要とせず、むしろ精神的な成長や熟成こそ最も必要とされています。人間的成長が出来ていない状態で茶の道に入っても、その点前作法や心構えに重みが生まれる事などあり得ないのです。だから茶の道の修行をはじめるのは、50~60年ほど前なら20歳ごろから、今なら25歳頃から始めるぐらいの方が良い、と考えられます。
茶道とは禅の道でもありますから、自分の人生をしっかりと振り返り、人とは何か、自分とは何者なのかと言うことを見極める力を兼ね備えていなくては、ただの茶道具オタクになるか、もしくは点前オタクになるのがオチです。要は、修道が余りに若すぎると、重みのある茶人、感性の高い茶人に成長することは非常に少ないのです。
その「重み」と言うキーワード。これは経営者にとっても非常に共通したフレーズです。
仮にご子息が経営を継ぐとして、何歳頃がベストタイミングでしょうか? 私が考えるに、実はそれは、茶の湯と同じぐらいのタイミングのほうが良いのです。
20歳前後では余りに若すぎるし、社会経験の質からすると、現在なら10年前後は外で社会経験を積ませてからはじめて自社に入社させ、下働きから始めるぐらいの方が良いと考えます。実際に経営層に組み込むのは、40歳頃が最も良いタイミングでしょう。
その年齢であれば、社会の酸いも甘いもずいぶんと見極めが付き、自社の環境を客観的に理解し、部下に対してかける言葉にも重みが増してきているころ。言葉の選び方も慎重になりますし、管理の経験もあるでしょうから、経営で人を動かすにあたって、何を基準にすれば良いのかが随分理解できるようになっている筈です。
そして何と言っても、40歳で会社を継ぐ立場になるとして、経営層に入るまでの20年近い社会経験が人間的な熟成と精神的な成長を促しています。いざ経営者の立場に立っても、こびへつらう部下の甘言に耳を貸さず、より実力有る者の評価を公平におこない、意識有る者の言葉に耳を傾けることが出来るようになっているのです。若い人では持ち得ない感性ですね。
ちなみにご子息が20代で自力で独立創業した場合は、30歳頃に会社を継がせても良いと考えています。と言うのも、やはり前述の通り、サラリーマンと自営業では社会経験の質が圧倒的に異なるからです。
センスのある後継者育成とは、非常に長い時間を掛けているものです。ある意味で、その気の長さこそが一流の証と言えるのではないでしょうか。
息子可愛さに、卒業即入社、即経営者など三流以下の行いです。
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