顧客が離れていく意外な理由
店舗ビジネスでは、顧客への対応を「差別化」することが重要だというのはこのコラムでも何回も申し上げている通りです。累計購買額や購買頻度、最新購買日などを物差しに、顧客サービスを戦略的に構築することで、上位顧客からの評価がさらに高まり、下位顧客はもっと良いサービスを求めて来店頻度を増やす良い流れがつくれます。
…と簡単に言いましたが、これにはいくつもの落とし穴が存在します。その中でもあまり注目されない、というよりは盲点ともいうべきことに「顧客への慣れ」があります。どういうことかというと、店舗側が顧客の来店に「慣れ」てしまって、言わば「知り合い」「お友達」のような感覚で接してしまう、それが進んで繁忙時に顧客を待たせる、片づけさせるような事態となり、いらぬ気を使わせて負担をかける状況を招くのです。
特に頻繁に来店するような顧客に対しては、スタッフ側も心を許し、油断してしまうからか、無意識のうちにその対応が「おざなり」になってしまうことがあるので注意が必要です。顧客は何も言いませんが、得てして気分を害している場合が少なくありません。
人間の慣れは怖いもので、それが当たり前になると価値は下がり、有難み、感謝の気持ちは薄れていきます。電気、ガス、水道をはじめとしたライフラインもそうですが、あるのが当たり前としていると、天災等で使えなくなった時にその重要性、有難みを痛感します。復旧した時の感謝の気持ち、嬉しさは格別で、私も熊本地震の経験から、その思いを十二分に味わいました。
来店頻度の高い顧客は、ほとんどの場合1回あたりの購買金額は少なくなっていきます。そのこともサービスの差別化が機能しなくなる要因の一つと言えるでしょう。実際には累計購買金額は増加しているにもかかわらず、「慣れ」と「1回当たり購買金額の低下」から顧客感が薄まり、「よく来るけどあまり買わない人」として対応が適当になっていくのは、私の経験からもよく見受けられる現象です。
この人間の心理的メカニズムをしっかりと考慮して店舗の仕組みを構築しなければ、上位顧客は離れていき、新規客は店舗を継続して利用してくれなくなるでしょう。それは店舗の売上減少に直接的につながります。
人間は「感情」で動く動物です。それは顧客もスタッフも同様です。双方に気持ちよく動いてもらうためには、心理的な「落とし穴」を理解したうえで、顧客サービスの仕組みを作り、細かなコミュニケーションを取っていく以外に方法はありません。
さて、店舗経営者の皆さん。
「慣れ」の怖さを理解していますか?
顧客だから「待たせても大丈夫」と思っていませんか?
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。