副業・兼業解禁から見えてくる、社員満足への新しいアプローチ
先日、支援しているある団体で「副業・兼業」についてのセミナーがありました。昨年、厚労省がモデル就業規則から「副業・兼業禁止」の主旨を外して以来、一気に関心が高まっている副業・兼業ですが、実は許可している企業は世の中の2割程度と言われ、普及の道のりはまだ遠いとされています。
「兼業・副業」については性善説に立つか性悪説に立つかによって、とらえ方が180度違うテーマですが、そのことはさておき。このセミナーで印象に残ったのは、「副業・兼業を許す企業ほど、社員のロイヤリティが上がる(らしい)」という言葉です。
私はいつも「利他性は相互作用」という言い方をしているのですが、それはどういうことかというと、自分よりも他人を優先する行為は、一見、自分に利のない道をあえて選択しているように見えて、実は、まわりまわって自分を利する行為になっているということです。相手を利する利他的な行為は、相手からもこちらに対する利他的な感情や行為を引き出しやすい、と生物学的にも言われています。
兼業・副業の文脈で言えば、社員に選択の自由を与え、自社の仕事以外の仕事をやっていいよという「利他的」な働きかけをすると、社員はそこにある種のポジティブな感情を抱いて、もっと会社に対して役に立とうと行動する。その結果として、そうでない場合よりも会社に対する貢献を志す可能性が高いというわけです。
短期的な成果を求めると、成果を出しやすいダイレクトな方法をとりがちですが、それよりも時間軸を長くとって利他性が伝播していくのを待つ。そしてそこに社員の創造性を発揮できる余地を残して、さらに大きな成果を狙うというやり方をとったらどうなるか。
ダイレクトな方法をとる場合はある程度の結果が予想でき、だからこそ安心が担保されています。ところが利他性の発露を待つ方法は、結果に対するコントロールが効かず、いつ成果が表れるかも定かではありません。信じて待つ力が求められますが、いったんこれが会社の文化になれば、顧客満足にまで影響を与える大きな力になるはずです。
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