打たれ弱い社員に悩んだら。折れない心を育ててはいけない理由
イキイキ働く社員が育ち、働きがいのある職場環境づくり、活気ある組織風土づくりを専門に行っている当社には、日ごろより人材育成に対する意識が高く、すでになんらかの取り組みを行っている企業の社長さんから様々な相談をお受けしております。
もちろんメンタルヘルス対策にも積極的に取り組んでいらっしゃいます。ご自身が創業者である経営者の方は、これまでの経験からご自身のメンタルの強さには自信をもっていらっしゃることが多く、最近の若手社員の打たれ弱い現状に頭を悩ませていらっしゃいます。
ところで、メンタルに強い人は、折れない心を持っているのではないとご存じでしたでしょうか。この話を経営者の前で話すと、多くの方が驚かれます。おそらくご自身が折れない心を持っていると自負しているか、折れない心になるために何らかのトレーニングをされてきたからだと考えます。
今、若い社員はメンタルに弱い、打たれ弱いということを言われる経営者の方は、もっと彼らを鍛えなければならないと思っているのです。ですが、今の時代、ハラスメントが気になり、どう厳しく指導したらよいのかわからなくなっているので対策の打ちようがなく、そのことがより頭痛のタネとなっているのです。
この場合、多くの方がメンタルの鍛え方について間違った認識を持っています。折れない心を持とうと、厳しい試練にも耐えなくてはならないと思っているのです。
どうしたらよいのか。それにはまず、折れない心ではなく、しなやかな心を作るということが必要だという認識を変えて欲しいのです。
何か辛いことや、しんどいことがあった場合、人間ならば、そのことで凹むということは自然なことです。自信喪失し、元気がなくなります。人によっては、胃が痛くなったり、夜、眠れなくなったりする場合もあるでしょう。そんなことをクヨクヨ悩んでいてはだめだ、と叱咤激励してはいけないのです。人間らしい、自然な現象だからです。
しなやかな心というのは、凹むことがあっても、そこから回復していく力がある心のことを言います。
実は、メンタルに強いというのは、この回復力を持っている人のことを言うのです。そして、トレーニングするのであれば、この回復力をいかに持つか、保てるかという練習が必要ということになるのです。
トレーニング方法は様々ですが、本人が行うものと、まわりが関与するものとがあります。
まず本人が行うものというのは、自己効力感を高める考え方と行動です。自分を追い詰めている状況を冷静に分析し、明るい面を見出す考え方や、そもそも失敗や落ち込みから気持ちを回復させる気晴らし行動、これまでの成功体験を振り返ったり、自分の強みや得意なことをやってみるという行動があります。
まわりが関与するというのは、叱咤激励するというよりは、回復するために必要な「手当て」、つまりサポート、支援をするということです。本人の失敗を上司が尻ぬぐいするのではなく、その状況に向き合い、克服できるよう必要なアドバイスや励ましなどを行うということです。これは甘やかしではありません。
失敗や逆境からいかに回復するか、その力を身に着けるためのトレーニングなのです。その後、本人にフィードバックし、失敗から何を学んだのか、次回にどう活かすかという振り返りをするのが上司の役目でもあります。
VUCA時代、想定不可能な出来事が押し寄せてくる可能性がある今この時代だからこそ、しなやかな心を持ち、逆境や失敗から這いあがる回復力を身に着けることが重要なのです。厳しい指導だけでは、立ち行かなくなっているのです。
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