100円で分かる社内における社長の言葉の理解度
経営理念を定めても、なかなかそれが浸透しないということがよくあります。しかし、それはある意味当たり前のことです。
ある会社で、ミネラルウォーターのペットボトルを見せて、「これは何でしょうか?」と質問をして、答えを紙に書いてもらいました。
その時、社長の他に5人の社員がいたのですが、社員のうち2人は「ミネラルウォーター」と答え、2人は「水」、そして、もう1人の社員は、ミネラルウォーターの商品名を言いました。
では、その時の社長の答えは「ペットボトル」。
この実験で分かったのは、コンビニで売っていて、誰もが知っている商品でさえ、社長と社員との間では認識が違う、社員の間でも理解が微妙に違うということです。
すごく単純な事実に対してさえ、人によってその事実を捉える言葉が違います。言葉が異なれば、伝わる事実も違ってきます。
このような現実を踏まえると、例えば、「お客様のために最善を尽くす」という経営理念を掲げていたとすれば、より抽象度が高くなっているので、対象となるお客様は誰か、最善とはどのくらいのレベルをいうのか、尽くすとは具体的にどのようなことか、について、社長と社員、また、社員同士の間でも、認識のズレが生じるのは至極当然なのです。
また、経営理念を具体化する方法として、社長が「現場に行け」と指示しても、その真意はちゃんと伝わっていません。
ある社員は「いや、私は現場に行ってます」と回答。
社長:「行くだけではダメで、お客様の声を聞いてるのか?」
社員:「ハイ、お客様とはちゃんと話をしています」
社長:「じゃぁ、どうしてこんなクレームが出てくるの?」
社員:「それは、・・・」
最初に指示した社長の真意は、「答えは現場にあるので、お客様の声にならない声にきちんと耳を傾けることで、仕事をしろ」ということでした。
しかしながら、社員は言葉の表面的な理解に留まり、物理的に現場に行く、定型的な会話をする、ことで、社長の指示に従って、言われた通りの仕事はしているという認識でいたのです。
このような時に社員に腹を立て、叱りつけても、あまり効果はありません。ここは冷静に言葉を通して、社員をしつける姿勢が必要です。
弊社がやっていることは、会社でミネラルウォーターのペットボトルを見せた時に、社員5人中5人が「それはペットボトルです!」と社長と同じレベルで事実を認識できるようにすることです。
対象がペットボトルのような簡単な事実であれば比較的容易ですが、これが社長の指示や経営理念など、抽象度が上がると、すぐにできることではありません。
上述のペットボトルの実験は100円あれば、すぐに実行できます。なお、その際、答えはいったん紙に書いてもらってから発表してもらうのが効果的です。
社長ご自身の認識と社員の認識がどれくらい違うのかが簡単に分かるので、機会がありましたら、一度やってみていただければと思います。
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