生産性向上、組織風土の活性化に必要な「心理的安全性」を知っているか
イキイキ働く社員が育ち、働きがいのある職場環境づくり、活気ある組織風土づくりを専門に行っている当社には、日ごろより人材育成に対する意識が高く、すでになんらかの取り組みを行っている企業の社長さんから様々な相談をお受けしております。
実際にコンサルティングをお申込みしていただく前にも、ある程度の時間をとり、現在のお悩みや課題についてヒアリングさせていただきますが、先日は、コンサルティングを実施している中で、あるご質問を受けました。
「高橋先生が言っているコミュニケーションの大切さは理解しました。でも一方で、弊社の組織の根本的な問題は別にあると思うのです。」と切り出されました。話を伺っていくと、縦割り組織の弊害とも言うべきなのか、検討する時間が長く決断時期が遅くなることから、ほぼ毎回プロジェクトの進捗が遅れてしまうということが、社員にとって最もストレスフルで、それが改善されない限り、仕事のやる気ややりがいも感じられないというのです。
もちろん、目の前にある仕事の意義を見直す、何のための、誰のための仕事なのかをじっくり考え定義することは重要だと感じてはいるものの、問題の本質は別にあると考えているとのこと。それが解決しない限り、何も変わらないのではないかという切実なご質問でした。
その点については、コンサルティングをお引き受けする前にもお聞きしていたのですが、現在の方がより切羽詰まった問題として頭から離れないご様子でした。今回は、「それは違います。」と反論せずに、まずはどこで問題が解決せずに滞っているのかについて伺いました。そうすると、毎回のように議論が進まずに滞ってしまう、その理由がわかってきたのです。
たとえば、同じ社内であっても、部署や立場が違うだけで、意見や考え方が対立するということはよくあります。自社の商品やサービスを本当に求めている人に届けたいという最終目標は同じであっても、そこにたどり着く方法や優先順位が違うのです。そのため、議論は平行線になりがちで、双方が「これは対立だ」と考えてしまうのです。立場の違う相手に対して、「理解しがたい」「こちらを理解しようとしない」となんでも対立関係でとらえてしまうという心理も働いてしまいます。
そう考えると、議論が滞ってしまう理由のひとつに、「相互理解の不足」と、それによる「コミュニケーションの不足」があることが考えられるというわけです。つまり、ここでもコミュニケーションは解決すべき大きな課題として浮かび上がってくるのです。それこそが問題の本質なのです。
とはいえ、信頼関係を築く、対話の頻度を増やせばよいと言うのは簡単であっても、実際に行うのは簡単ではありません。
そこでお勧めなのが、様々な立場や部署のメンバーが集まり、定期的に話をするというミーティングの設計です。このミーティングで話すのは、何も業務に限ったことだけではありません。よりざっくばらんに、普段考えていること、悩んでいること、困っていることなどを話し合うのです。そしてこのミーティングは結論ありきではありません。結論が出ないこともあります。
話す内容が業務に限ってしまうと、普段の対立関係からなかなか脱出できません。そもそも相手を信頼しきれていないうちは、どちらかが押すか引くかのせめぎ合いになってしまい、相手から押し切られた方は、その対話自体が不満でもあり苦痛なり、関係はますますギスギスしてしまいます。
といって、ギスギスした関係を解消しようと社内旅行や社内イベントを実施したとしても、その場で交流は出来るものの、一時的なもので終わってしまうことも多々あります。楽しい時間を共有するだけではなく、相互理解を深めるための時間と機会が必要なのです。
この時、ファシリテータを指名し、双方が自由でありながらも、一方的にならないよう配慮することが重要です。また、相手を一方的に非難しないなどの基本的ルールを事前に決めておくことが良いでしょう。
職場のコミュニケーション活性化は、健康経営優良法人認定基準にも含まれている重要項目のひとつです。時間はかかるかもしれませんが、相手を信頼する、そして勝ち負けではなく、安心して議論できる土壌をつくることから始めてください。
今、生産性を高めるものとして職場に求められているのは、信頼、安心して議論できる時間と機会づくりなのです。上手に活かした会社だけが成長していくのです。
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