一番の人生の無駄遣い
店舗ビジネスを成功させるにあたって、経営者が明確な目的や目標を持っておくことは絶対に必要なことだと私は思っています。これは当たり前と言えば当たり前な話であり、言うまでもないことです。それなのになぜこんなことを言っているのか。私がコンサルとして関わる経営者の中には目的も目標も持っていない、正確に言えばそれらを失ってしまった経営者が意外に多く見受けられるからです。
誰でも創業当初はこんな店にしたい。こんなお客様に来てほしい。売上はこれくらいで、3年目には2店舗目を出して、5年目には5店舗、フランチャイズシステムを作って、チェーン化して、経営者を育て、事業を売却して、自身はまた新たな事業を立ち上げて…
ここまではないにしても、皆何らかの目的、言い換えれば夢や希望にあふれた時期があったのではないでしょうか。それが10年、20年経つとその日の売上すらあまり気にしないようになり、夢や希望はおろか目的も目標も全くない、いかにもつまらなさそうな顔で毎日を過ごす経営者が実際に結構な数いるのです。
まあ、10年や20年店舗経営を続けること自体がすごいことでもありますので、その部分は賞賛すべきなのですが、ただ惰性でやっているような店も少なくありません。ネガティブな意見もよく発せられ、常にあきらめにも似た雰囲気が漂っています。
その道のプロとして、長年功績を残されたことに関してはもちろん尊敬する反面、ではここからどうするのか、という最重要課題に対して、「私はこの仕事だけしかできないから…」「もうこの年では新しいことは無理…」「もう何をしてもムダ…」などと何の努力もせず悲観的な態度で一歩もその場から動かないような経営者に対しては、年齢や経験を問わずいら立ちを覚えます。
組織の大小を問わず、そのような経営者の元で働いているスタッフに対して同情するとともに、なぜいつまでもそこにいるのか?といった疑問も浮かび上がります(皆さん色々な事情はありますが)。経営者から何も言われないから働きやすいのかもしれません。
いずれにしても、経営者が何の目的も目標も持たずに惰性で店舗経営を続けていくことは、私に言わせれば「人生の無駄遣い」以外の何物でもありません。そこにいるスタッフにも人生の無駄遣いをさせてしまうことになるのです。経営者の皆さん、そうなってしまう前に、自分自身がなにをしたいのか、今後どうしていきたいのかを考える時間を持ちましょう。
「仕事に挑戦を感じなくなった者は成長が止まったとされる。だが有能であって病気でないならば、仕事さえ変えれば再び成長する。刺激と充実の源だった仕事への倦怠から逃れるための酒や、火遊びや、精神分析医よりもはるかに面白いはずである」P・F・ドラッカー「断絶の時代」より
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