経営理念を浸透させるにはどうしたらいいでしょう。
先日、ある中小企業の幹部と話をしていたときのこと。経営理念を明文化したが、浸透策が思うように進んでいかないという話題になりました。私は常々「理念のような抽象的な概念は、各自の経験とひも付けてください」とお伝えしているのですが、この会社では「経験とひも付けるような機会もない」というわけです。
確かに、顧客との接触の少ない製造現場の社員などは毎日がルーティン作業で、目の前のことに意識を集中せざるを得ず、理念のような抽象的な概念が入る余地がないのも理解できます。
理念を浸透させることのメリット、その一つは、日々、社員の前に現れる選択肢に対して一定の判断基準を提供できることです。それによりマイクロマネジメントが不要になる、つまり管理側が楽になるという点が挙げられます。これと呼応して、社員側にもメリットがあります。それは、この会社で働く理由が明確になるということです。キャリア論では、会社のビジョンと個人のビジョンの重なり合いが大きいほど、その会社で働く意義が明確になると言いますが、まさにそれと同じことが経営理念の恩恵としてもいえるわけです。
会社の理念と個人の実感がかけ離れていると、社員にとっての理念は「押し付けられた価値観」にしかなりません。こうなると「やらされ感」のネタが一つ増えるということになり、逆効果です。
では、どうすればよいのか。
会社の理念には、その文言ができた理由やいきさつや、創業者の想いなどがあるはずです。まずはそのストーリーから共有し、そこにある人肌を感じるところから始めたいものです。
私が提唱するES-CSチェーンにおいても「共感」は重要なキーワードですが、抽象的な概念を共有することはできなくても、素朴に気持ちを重ね合わせることはできるはずです。理念浸透策の第一歩は、このあたりから考えてみるのもよいかもしれません。
ES-CSチェーンコンサルタント 村木則予
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