プラスチックごみ問題の行方について
先週の初めにかけて、国内の各メディアでも長野県で開催されていたG20環境大臣会合においてプラスチックごみに関する対策が話し合われ、国際的な枠組みが作られることを伝える報道が相次ぎました。
この話は、今週大阪で開かれるG20首脳会議でも引き続き話し合われる予定です。なにせ世界をリードする20ヶ国によるコミットメントですから、それはそれで大変意義のあることです。世界のプラスチックごみに対する対策が加速化されることには間違いがないのですが、この議論は今後どのように展開してゆくのでしょうか?
識者によると、事の起こりは国連の環境対策に関する無償資金スキームである地球環境ファシリティ(GEFといいます)の科学技術評価パネルという専門家会議が2013年に海洋プラスチックの問題を提起したことによるのだそうです。
1992年のリオ地球サミット以降、国際社会は環境面のさまざまな課題について取り組みを続けています。その中にはオゾン層保護の問題のように成功したという評価を与えられそうなものもあれば、バーゼル条約に代表される廃棄物の越境移動問題のように手続きが整備され、現在システムとして稼働中のもの、パリ協定のように対策の進め方は決まったが、政治的な部分でまだ先行きが不透明なものがあるなど、状況はさまざまです。
今年5月に行われたバーゼル条約の第14回締結国会合では、汚れたプラスチックごみを有害廃棄物扱いすることが決まり、法的に一定の歯止めはかけられたのですが、根本から問題を解決するためにはそれだけでは不十分です。
一つの方策としては、既存の国際条約にプラスチックごみの問題を追加的に織り込んで解決を図るというアプローチがありうるのだろうと思います。具体的には生物多様性条約などが挙げられますが、本来は気候変動を取り扱うパリ協定についても関係性は少なくないと言われています。既存の枠組みを尊重するため、準備工期やコストなどを押さえる効果が期待される反面で、社会的な訴求性は必ずしも強くならないかもしれません。
今一つの方策としては、水銀問題について水俣条約ができたように、海洋プラスチックを含む課題解決のために新しい条約を立ち上げるというやり方で、これだとG20の負託に十分応える形で海洋プラスチック問題に立ち向かえるだけの強い訴求性を持たせることが可能になります。
しかしながら新しい条約を作るとすると、準備にかかる時間やコストなど、条約一本分の負荷が新たに発生することになります。ちなみに水俣条約は2003年にスイスとノルウェーが提案してから2013年に条約として成立するまで10年の時間が必要とされました。世界がプラスチックごみの問題に対応できるようになるまで、それだけの時間をかけるのか?ここは大変難しい問題です。
私見ですが、もともとGEFが震源地であるという歴史を想起すると、GEFは新しい条約を欲しがっているのだろうなという絵姿がおぼろげに透けて見えるような気がします。というのも、GEFが取り扱う複合的な環境課題のそれぞれについて、国際社会は関連する条約を持っているのですが、こと海洋プラスチックについては国際水系の環境保全というマンデートを負いながら、他方で参照すべき条約が存在しないというアンバランスな状態が続いているためです。
実務上対策の予算措置を講じる担当者が「参照できる条約を作って」と言っている状態だとしたら、世の中は意外と速く動くかもしれません。水俣条約よりも短い工期で条約が出来て、素早い立ち上がりで対策が打たれるようになるのではないかと、現状について私はそんなふうに見ているのですが。
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