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社内に“ブラックボックス”が発生してしまう理由

SPECIAL

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルタント

株式会社キラーサービス研究所

代表取締役 

経営革新コンサルタント。イレギュラー対応を標準化することで、ライバル不在で儲かる、「特別ビジネス」をつくりあげる専門家。倒産状態に陥った企業の経営再建から、成長企業の新規事業立ち上げまで、様々なステージにある数多くの企業を支援。イレギュラー対応を仕組みで廻して独自の市場をつくりだす画期的手法に、多くの経営者から絶大な評価を集める注目のコンサルタント。

「こんなに忙しいのに、決算を締めてみたら全然儲かってないんですよ……。なんなんでしょう?」 ── このように言われる社長にこれまで何人もお会いしました。

ひとつひとつの受注案件ではちゃんと利益が出るはずなのに、実際には利益は出ていないしお金も残っていないというわけです。

こういう場合の社長のジレンマを言語化すると、「自分の会社なのに何が起こっているかわからない」ということでしょう。

見積りがおかしかったのか…?
 生産の過程でロスがでてしまったのか…?
 社員の動き方が非効率なのか…?
 残業が多すぎるのか…?
 へんな値引きを入れてしまっているのか…?

社内に“ブラックボックス”がいくつもあり、どの箱から開けたらいいのかわからないし、そもそも開くのか?というぐらいに問題がみえなかったりします。

この「問題がみえない」ということが実に気持ち悪く、経営者を不安にさせます。

不安は無をあらわにする」というある哲学者の言葉があります。人はなぜ「不安」になるか? それは、「恐怖」には対象があるが、「不安」には対象がないからだと。対象がないからこそ、私たちは「不安」になるわけです。

もちろん、この「なぜか儲からない、お金が残らない」という問題については原因はあります。おそらく複数のケースが絡み合ってのことでしょう。しかし、その原因がみえないため、ずっと社長の中で不安や気持ち悪さが残り、心を萎えさせるのです。

これはたとえば病気も同じで、すごく体調が悪いときに、その病名がわかれば人は安心できます。治療法がわかるからです。でもなんの病気かわからないとなれば、不安でしかたありませんし、何をやっていいのかわかりません。

人が行動するときというのは、以下のようなステップをたどっています。

①事実
  ↓
 ②必要性
  ↓
 ③有効性
  ↓
 ④行動

①の事実というのは問題の認識です。たとえば「うちは利益率が低い」といったものです。

そして②の必要性というのは、「利益率を上げるためには、見積りの精度を上げなければならない」といった、①の根拠となるものです。

そして③の有効性は、②を解決するためにはこれが有効だという主張です。たとえば「全員が共通して使う見積り作成フォーマットをつくるのがいい」といったものです。

そして④で実際にその行動に移るというステップです。

このステップを見てもわかるとおり、事実である「利益率が低い」といった問題に対して、②の「見積りの精度が問題だ」という根拠や必要性がみえないと、③の主張(やるべきこと)もわからず、当然④の行動には至りようがないということです。

うちの会社はなにをする必要があるのか?

問題のボトムは何なのか?

ここを見える化できていないと、経営課題は延々と放置されつづけ、社長のエネルギーばかりが消費されていくことになります。

ではなぜ問題がブラックボックス化してしまうのか?

これは過去のコラムでもたびたびお伝えしていることですが、「仕事が人に張りついている」からです。仕事のやり方が「誰々さんのやり方」になっていて会社のやり方になっておらず、仕組み化ができていないからです。

これまで多くの会社の経営上の課題解決に立ち会ってきた経験からみえてきた「儲かっていない会社の特徴」があります。

それは「情報がさっと出てこない」ということです。

過去の資料やデータ、記録などが各社員のPCの中やノートの上、あるいは頭の中にしまわれたまま、すぐ出てくるようになっていないのです。ですからその情報を他の社員が生かすこともできないし、当の本人すらもその情報を忘れてしまい、同じ失敗を繰り返したり…ということが起こりがちです。

たとえば、損が出たプロジェクトがあったとして、見積りの段階ではどう考えていたか振り返ろうと思っても、その情報がすでにないということが起こるといった具合です。

これはほんの一例ですが、一事が万事、「記録を残す」「文書化する」「共有して全社で活用する」といったことが全社レベルで行われていなければ、ブラックボックスは発生し続けます。

見える化、仕組み化、標準化…、これらを一過性や一部の活動ではなく、全社の習慣として根付かせ、会社の文化にまで昇華させていく必要があります。

もちろん、経営の結果は環境次第、相手次第という面も大きく、「こうすれば必ず儲かる」という公式はありません。常に仮説レベルで動いていくしかないわけですが、その仮説のロジックを記録にしておかなければ、あとで振り返ることもできませんし、ずっと当てずっぽうの経営を続けることになってしまいます。

まずは、いま社内で何が起こっているのか、その実態把握が非常に大事です。今起こっている事象(事実)の根拠がわかれば、なにをすべきかは自ずと明確になります。そして社長も社員も迷いがなくなります。社員も問題を自分ごと化できます。

人間ドックでCTスキャンを受けるように、経営上の課題も見える化し、ブラックボックスを一つ一つ叩き壊すことで、社長の心の不安を取り除いていきましょう。

 

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