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国際リサイクルシステムとビジネスチャンス

SPECIAL

オルタナティブ経営コンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

昨年、中国が廃プラスチックの輸入を全面的に禁止する措置を取って以降の国際リサイクルシステムはその余波に揉まれ続けています。その中で改めて見えてきた景色があるので、今日はそのあたりについて書こうと思います。

1. 改めて判った縦割りの市場特性

日本は特にそうですが、自治体が取り扱う一般廃棄物(主に家庭や一部の事業所などから出て、公共の廃棄物処分施設に持ち込まれるもの)と民間事業者が取り扱う産業廃棄物で処理のフローが異なります。

廃プラスチックの場合、前者は主として容器包装リサイクル法に則って自らまたは指定法人やリサイクル事業者に委託してマテリアルやケミカルおよびサーマルリサイクルされています。

後者はマテリアルリサイクルの原料として市場で有価取引の対象となってきた経緯があるのですが、これまで買い手は主に中国の廃棄物処理業者でした。このため大量の廃プラスチックが世界各地から中国へと輸出されてきたのです。

先日、都内で行われたセミナーで専門家による報告があったのですが、中国政府による禁輸措置以降、国内でプラゴミの引き受け価格は3倍から、どうかすると10倍にも達している状況だそうです。10倍とは「事実上、引取をお断りします」という価格ですよね。

他方で自治体による(一般廃棄物ということになります)処分施設への受入について、受入価格自体はまだ大きく変動するまでには至っていないとのことで、これにはいくつかの原因があると考えられます。つまり、①一般廃棄物と産業廃棄物のフローが規制によって峻別されており、相互の影響があまり大きくない、②一般廃棄物の処理は法律に則り廃棄物の受入方法や処分量について計画があり、その数字がすぐに大きくは変動しない、③人口減少などによって一般廃棄物は全体的に減少傾向にあり、入札価格が高くなる基調とはいえない、等の原因によるものと思われます。

今、日本のプラゴミの1割は東京地区で出てくるものだそうですが、処理余力のある地方の焼却工場へ輸送できれば、より効率的な処理ができるかもしれないところ、輸送ドライバーの人手不足がネックになっていて、なかなかうまく対応できていない、という話もありました。

ニュースでは、各地の産廃置場が行き場を失った廃プラスチックで満杯状態、というような話も聞きますが、厳しく縦割りされた廃棄物のフローを見直すことが出来れば、物理的に本当に困る事態を招くことなく対応できるのかもしれません。

2.  規制で変わるビジネスモデル

マクロで言って廃プラスチックは産廃分野が供給過多、一廃分野に余裕ありという状態なわけですから、経済原則的に言えば一廃分野に価格交渉力が生じるはずで、そうだとすると一廃分野の処理事業者にとっては稼ぎ時、になるはずの話です。他方で産廃事業者の立場に立てば、これまで中国が買い取ってくれた廃プラスチックの儲けがなくなり、一廃の処理施設に持ち込むためのコストがかかるとすれば、その分の負担をどうするかが頭痛のタネになるところだと思います。

廃プラスチックは、実は焼却時のカロリー原単位が高く、ごみ発電をしている施設にとってはサーマルリサイクルのための大切な資源と言える側面を持ちます。ここで生じる儲けの可能性として、廃プラスチック1㎏あたりのカロリー貢献度を金額に換算できれば、産廃事業者から一廃処理施設への受け渡しモデルが構築できるのではないだろうか、という仮説が成り立ちます。

実際には廃棄物の受入条件が条例等で規制されている側面もあるので、そう簡単な話ではないと思いますが、この問題には保管場が満杯で苦しんでいる産廃事業者への対策という側面もあります。ですからたとえば地方議会などが音頭を取って新たな商流を開拓できれば、いわゆるグリーンファイナンスによって社会全体として最適な取り組み方法を編み出せる可能性は小さくないと思います。

諸外国と異なり、すでに製品段階から色のついていないPETボトルや剥がしやすいラベル、圧縮しやすい発泡スチロールなどが一般的となっている日本は、規制の枠組みを機動的に運用することでリサイクル比率を上げ、災い転じて福とするビジネスチャンスも創り出して行ける土壌にあるのです。

 

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