「なぜ、多くの企業で業務量が減らないのか?人時の苦手な社長は、売上を上げるのも下手!?その理由は○○にあります」
T社長の出席する営業会議の中で、業務改革に取り組む事業所の非効率改善項目について報告がありました。
「特売の回数の見直し」、「ハンディターミナル端末の台数が足りない」、「メーカー販促物が多すぎる」、「このアンケート調査自体ムダ」等… 結構厳しい意見が出ています。
(T社長の顔色が変わりました。)
既に3割以上の店補で非効率業務改善に取組んでいるのに、いまだに、ネガティブ意見が出てくることに違和感を持ったからです。
T社長曰く
「理想と現実、これが見えていなければ、やろうとすることは見えない。本部が今のままでいれば何も変わらない。
何のために、こんなムダな調査をやるんだ?という意見がでてくるということは、本部が現実だけみて仕事を毎日しているからだ」
(沈黙…)
「だから 我々経営者がもっと頑張らなくちゃだめなんだ!!」と檄を飛ばしました。
――――業務の洗いだしをして、人時の貼り付けを変えていきますと、社内コミュニケーションの在り方が変わります。と伊藤は申し上げました。
大量に人がいた時は、長時間同じ職場で顔を合わせているので、各自がバラバラで仕事をしても、お互いの仕事が見える状態にありました。
ところが、業務に人をつけてやるようにしますと、一斉に実施する「集中品出し」とか「混雑時のレジ支援」といった同時に多くの人手が必要なのは 一日のうちでも限られていることが見えてきます。
また、加工や、発注、荷受け、清掃といった作業は、少人数で回すほうが効率的なことも徐々に分かってきます。
このように全て作業の流れには大小があるため、フルタイムの社員が長時間いなくても、業務がスムーズに引き継がれていく環境づくりが必要です。
運営部長曰く
「朝礼の在り方を変えるように 社長から指示を受けています。実験店では、インフォメーションボードを作り既に掲示しテスト運用を始めています」
かつての朝礼は、時間もやる内容も決まっていませんでした。そのため、伝わらないことが多かったり、やるべきことが 〆切にに間に合わないことが問題となっていました。
そこで、現状の朝礼の実態を調査し、目的、役割を「再定義」することにしたのです。
実際に調べてみると…
店長が毎日6部門のマネジャーに対して行う、マネジャーミーティングは毎日30分間やっていて、一日30分×6人で180分=3人時かかっていました。
各売場の朝礼は不定期であったため、日々の実態を調査に基づき仮説をたてました。一売場出勤者が6人とすれば、一日10分×6人=60分。6売場で6人時かかっていることになります。
これらを合わせると店トータルで一日9人時かかっていて、年間で3285人時 時給1000円とすると約320万円以上のミーティングコストが掛かっている計算になります。
運営部長は、これを半分にしようと目標を掲げ、インフォメーションボードの運用を設定したのです。
連絡事項は、すべてインフォメーションボードで行うことにし、原則、朝礼やミーティングでは業務連絡は行ないません。店長と各マネジャーは連絡事項を事前記入し、パートナーさんは出社したら、その連絡シートを確認してから職場に入ります。
「え? では朝礼は、何をやるのか?」という声が聞こえてきそうですが
朝礼では、必ずやらなくてはならないことがあります。
それは… 「賞賛」です。
朝礼では、昨日一番貢献してくれた人をマネジャーは発表し、皆で賞賛し拍手を贈るのです。
そもそも、顧客第一と言いながら、事務所に呼ばれ注意はされることはあっても、褒められも、称賛もない職場で、売場に出たら元気な笑顔で「いらっしゃいませ」と言いいなさい。というほうが無理というものです。
ダメなことや、悪いとこは指摘することはできます。一方で、良い事や、素晴らしいこととなると、それは「出来てあたりまえ」「常識的なこと」とされてしまいます。
人は誰からも褒められず、認められなくなると、アイデアや意見を出さなくなります。
はじめは、「照れくさくて、何を褒めたらいいのかわからない」「そんな良い事ばかり毎日続くわけない」といった戸惑いもありました。
しかし やっていくうちに、聞いてる、聞いてないというコミュニケーションロスなくなり、業務遅延はほぼゼロとなりました。
「そうは言っても ひとりひとりの作業を見ているわけではないから…」という声も聞こえてきそうですが、
当然ですが、マネジャーは ひとりひとりの行動をよく知らなければ「褒める」ことはできません。
そのためには、日々の作業指示書があって、各自が今日どんな作業をやるのか?マネジャー自身が知っていなくては「褒めるポイント」も「注意しなければならない点」も分かりません。
語弊を恐れず申し上げると、作業指示書にもとづくレイバースケジュールの環境が無ければ、企業として、コミュニケーションロスの逓減も、朝礼の定義の再設定も、それにかかる業務量削減も、何ひとつできないということになります。
店長からは、
「実際に 日々のレイバースケジュールを使いこなしているマネジャーの売場は、売上が良くなってきています」という報告が毎月あがってきます。
例えば
「売場の端から加工調理していた商品を、売れる商品から加工調理する手順にかえたところ午前中の売上が上がってきている」とか
「納品量が多い日は、予め他部門の応援要請で開店時に品出しを100%完了させることで、売上アップになっている」といったことが、時間帯の売上の変化をみるとハッキリとわかります。
また「手の空く時間はレジに何人時だすと日々決めて交代で支援にいく」といった、人時の流動化を積極的に行っているマネジャーほど店の収益にアップとなる働きをしていることもわかります。
一方では、上手く行かない報告も上がってきています。
その多くは、自分が抱える人員体制の中だけで、なんとかやり繰りしようとするマネジャーです。
「手が空いたら掃除や整理整頓をさせる」
「時間が余ったら商品手直しする」
「常に大勢の人員を抱え、常に忙しく動き回っていることこそが美徳」
と作業指示書など作らなくても、自己流やり方が早く終わるからいいというマネジャーも多くいるからです。
T社長の会社は、作業指示書をレイバースケジュール上で運用できる環境を作り、それを活用するマネジャーが増えたことが、売上浮上のきっかけになったと言えます。
今までは、通路にはみ出した大量陳列、昼や夕方のピークだけに偏った売場体制があたりまえでした。作業指示書を使うことで、定番商品が全て陳列されていることの方が売上アップすると認知されはじめると同時に、スッキリとした見通しのよい売場体制に変わったのは一目瞭然です。
最初は、こういったことも一つ一つプロジェクトで 時間をかけやってきました。今では、社長からこうして各担当にバンバン指示がでて、次々と自働的に非効率業務が議題にあがり改善されていくようになっています。
足の遅い生徒が、サッカーチームに入って練習方法を教わりボールを追っかけているうちに、人並み以上走るのが早くなるように、走りながらパスを回し得点ゴールすることが目的となると、当然、瞬発力や持久力といった力が身に付いてきます。
プロジェクも同じで、最初はやり方が分からなくても、人時目標があり、継続できる環境があれば、人並み以上に考える筋力が鍛えられていくことになります。
T社長の会社も、はじめは、こちらがだす課題に数値を埋めて期日までに提出するのが精一杯でした。
今は、教わったことを、各自が考え、指示待ちすることなく働ける社内環境が整ったことで、業務量の軽減化が進んだと言えます。
誰もが理想のゴールを目差せる環境を経営が創り、売上を上げるための人時配分の仕組みを店長が使い始めることで、営業成績は大きく変わってくるのです。
さあ 人口減少の今、貴社ではまだ、売上こそが全てと檄を飛ばし続けますか?それとも、営業時間をフルカバーするきめ細かな人時体制で売上を上げていきますか?
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