速さばかりではない、開発における時をめぐる戦い
「この技術は、開発してから売れるようになるまで、7年もかかりました。今度は、そうならないようにしたいのです。」先日ご相談を受けた経営者の言葉です。
売れるまでの間は、資金繰りが大変だったそうで、「あんな苦労は二度としたくない。開発開始から売れるまでを、なんとかもっと速くする方法なないでしょうか?」そう少し顔を紅潮させながらのご相談でした。
この「もっと速く開発して、もっと速く売りたい」というのは、経営者が共通して抱える悩みです。
かける経営資源を少なくし、しかもその回収を早くしたい。技術開発から商品化、事業化までに時間をかければかけるほど、人件費を含め、多くの経営資源が必要になる。そればかりか、その間、試行錯誤を繰り返すために、さらなる経営資源の投入を余儀なくされてしまう。そうならないためにも、速く開発して、速く売りたい、経営者の気持ちとしては、そうなりがちです。その結果、技術開発を急がせる指示を出したり、あるいは、開発者が経営者の気持ちを察するなどして、時間に追い立てられるように技術開発を急ぐことになります。
もちろん、技術開発スピードを上げること自体は必要なことです。
ただし、その前に「何のために急ぐのか?」ということを考えなければなりません。
それは、当然、お客様が求める商品を速くお客様に届けるためです。
ところが、この「お客様が求める・・・」というのが忘れ去られ、とにかく技術開発を急いだり、逆に、じっくり技術開発に時間をかけたり、といったことが開発の現場で起こっています。
ここで、絶対に忘れてはならないことがあります。
それは、技術が商品となり売れ始めるのは、あくまで「お客様のタイミングで決まる」ということです。
言ってしまえば、至極当たり前のことですが、ところが、いざ開発を始めると、この当たり前のことが、どこかに行ってしまい、「自社の、あるいは、開発者のタイミングで売ろうとする」ことが起こります。その結果、技術開発が速すぎたり、遅すぎたりということが当たり前のように起こっているのです。
実際に、冒頭の企業も、詳しく開発内容をお聞きすると、開発した技術があまりにも画期的だったために、なかなかお客様に認知されず、使い道も見つからずに、時間ばかりかかってしまったとのことでした。画期的な技術が開発さえできれば、すぐに売れるというふうに考えていたのです。その結果は、自社のタイミングでは売れずに、お客様が欲しくなる時期まで、長い長い年月がかかってしまったのです。この企業の場合は、経営者の懸命の努力のおかげで、売れるまでなんとか持ちこたえることができたのでまだ良かったですが、多くの場合は、そこまで長い年月は耐えることができません。
技術開発とは、その市場投入が遅すぎてはいけませんが、速すぎてもいけないのです。
とにかく、技術開発を急げ、急げは、片手落ちです。きちんとお客様が受け入れる、購入するタイミングを見定めること、そして、開発完了のタイミングをこれと同期させること、これが重要です。当然ながら、そのタイミングとは、極めて限られた時間になり、それだけに、とらえるのは難しくなります。考え無しにたまたまとらえられるほど甘くはありません。開発に取り組む前には、必ず、この時を読むことをしなければなりません。そうしないと、とてもこの限られたタイミングをとらえることはできないのです。
やみくもに急ぐのではなく、適切な時を読むこと。これが、時間に翻弄されないための秘訣です。
御社が急ぐその開発は、きちんとタイミングを見定めてから、取り組んでいますか?
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