借入に依存しない社長が考えること
当社には、多くの同族会社のオーナー社長や後継社長がお見えになられますが、運転資金を自社の手元資金で賄えており、新たな攻めの投資を行う時だけ銀行融資を活用するという状態の会社もあれば、常に運転資金を銀行融資に頼っている状態という会社もあります。
銀行からお金を借りること自体は、決して悪いことではありません。もし万が一、無借金経営を経営の目的にしてしまっていたとしたら、本当に必要な時に、必要な事業投資をすることが叶わず、事業はしりすぼみになってしまいます。借入は「自己資金を貯めるまでの時間を買うもの」と正しく理解した上で、「日々の経営の努力の結果、『実質無借金経営』になっていた」という状態を最終的に目指すべきなのです。
だからといって、むやみに銀行からお金を借りればよいという話ではありません。会社が行っている業種業態によって借入依存度は大きく変わってきますし、置かれている成長のステージによっても、当然、融資戦略は変わってきます。
不動産業やホテル業などのハコモノ産業の場合には、最初に土地や建物への投資が必要になってきます。これを全額自己資金で賄うとなると長い年月がかかってしまいます。だからこそ、上手に銀行からお金を借りて、安定的に返していくという実務が不可欠になってきます。
卸売業や建設業の場合は、売掛金や在庫(未成工事)が膨らみやすいという特徴があります。製造業の場合は、加えて製造設備も必要となってきますから「運転資金」と「設備投資資金」をどのように回していくのか、財務戦略を持っている会社とそうでない会社とでは事業展開の幅に、圧倒的な差がでてきます。
運転資金を銀行融資に頼らない状態にするというと、多くの社長が、最初はこのような反応を示します。
「売掛金の入金期間や買掛金の支払期間なんて、変えられるはずがない」
「長年手形取引でやってきているから、ここは動かしたくない」
「在庫が滞留しているのはわかっているけど、これは変えられない」
しかし、会社の内情を調べてみると、変えられないのではなく「変わりたくない」「変えたくない」「自分がやるのは嫌だ」「銀行に貸してもらえばいいや」と無意識のうちに、社長自身が考えてしまっているのです。
どんな業種、業態でも、それが衰退産業であろうがなかろうが、周囲を見渡せば必ずどこかに上手くいっている会社は存在します。自社のお金の流れを社長自らが意図して『善循環』にすることで、銀行融資に頼らない状態を手にしている会社も多く存在します。
強い財務体質の会社の社長ほど「もっと強い財務体質にするために、他にできることがないか?」と社長自身が自らのアタマで考え、実行しようとします。「○○のような方法はどうか?」「他社で面白い取り組みをしているが、ウチにも導入できないか?」と常に考えます。
一方で、常に銀行融資に頼っている財務体質の弱い会社の社長ほど「そんな方法は、きっと無理に決まっている」と、自ら諦めてしまっています。そのコトバの裏には「長年○○でやってきたから、変えられるはずはない」「そんな面倒なことはやりたくない」という思考停止状態が見え隠れしているのです。
運転資金は銀行も貸しやすいですし、今は融資環境も良好なので、無意識のうちに依存しやすいのもわかります。しかし、会社の状態が悪化したり、経済情勢が大きく変動したりした場合には、あっという間にそのハシゴは外されてしまうという現実をよくよく理解しておくべきなのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。もっといえば、会社の未来を創ることです。
ダイヤモンド財務®コンサルタント
舘野 愛
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