商品魅力化戦略のポイント
平成の終わりから新しい時代になって顕著なのが、企業や団体の「エシカル」への取り組みです。エシカル(ethical)とは、「倫理的」「道徳上」という意味の形容詞であり、「社会的な課題解決」「環境への配慮」「労働環境に配慮」した取り組みです。
例えば、服作りの現場では農薬や除草剤を使わないオーガニックコットンを使ったり、工場など製造現場の労働環境の改善を目指したりする取り組みです。こういった企業姿勢に共感して買い物することを「エシカル消費」と呼び、モノであふれる成熟社会の気分を表現したトレンドワードとして注目されています。
この連載コラムでも、経営者の考え方からはじまって「企業としての理念、何のために御社が在るのか、といった根本的な考え方を言葉にしてコミットすることがとても大事」と繰り返しお伝えしております。そうした言葉が、社内スタッフをはじめ、パートアルバイト、その家族、関連企業にとっての道しるべとなって、ブレることなく前進することができます。当然、時代の空気感である「エシカル消費」に対する意識も真剣に考えて自社なりの哲学を明文化することが必要不可欠です。
その上でしっかりと押さえておくべき意識があります。それは買い物においての生活者感覚です。意識すべき感覚とは、理屈は「見た目」に勝てないし、正しいことは「楽しいこと」に勝てない。ということです。御社の熱狂的なファンであれば、御社の理念やストーリーに共感し、御社を選んで買っているかもしれません。が、ふつうのお客さんは、そうした背景、理屈には関係なく「いいな」「ほしいな」「たべたいな」と直感的に買ってくれるお客様ではないでしょうか。ご自身が一生活者として、リアルショップやネットショップでの購買行動を振り返れご理解いただけるはずです。
どんなに道徳的で倫理的な商品であったとしても「いいな」と直感的に思うものでなければ、いまのお客様は商品を買いません。消費の7割が女性と言われていますが、特に女性はどんなに倫理的に正しい素晴らしい商品であっても、見た目がかわいくない商品は買わない、つかわない、口コミしない、生きものです。「正しい」ことよりも「自分のテンション、気持ちがあがるものを持ちたいし使いたい」のがリアルな気持ちです。写真映えする、といったことも非常に大事な要素となります。
「ひとはそんなに真面目には買い物するものではない。もっとテキトー、もっといい加減」という意識を絶対に忘れてはいけないのです。社会的課題解決、環境への配慮という人としての良識は必要不可欠ですが、企業経営においては大きなマーケットを動かしている大手企業が先んじて取り組むべきことです。
中小企業はいついかなる時でも、生活者の生の声、顧客の生の声、生のクレームや不満、不快、要望、欲求を天の声とし、そこに眠っている「宝」を見つけて自社ビジネスを磨き上げること。そしてお客様に満足していただき、喜んでいただき、新しいお客様を増やすこと。ここに命を燃やしてゆくことが求められています。
食品であれば、日本のマーケットで手に入る商品のほとんどが「良品」であり、ある程度「美味しい」という想像がつきます。似たような商品が陳列されている売り場で、どうやったら手にとってもらえるのか。それはズバリ「見た目」です。「見た目も素敵」が非常に大事です。
商品の見た目とはパッケージやネーミング表現です。チェックポイントは複眼的にあり当コラムでは紹介しきれませんが、わたくしが四半世紀の商品プロデュースで採用してきたコツを一つご紹介しましょう。
一般的に、わたくしたちは商品パッケージを見て約2秒程度で「買うか」「買わないか」を判断しています。「パッと見」です。パッと見、というのは細部をよく見る状態とは真逆のアクションで、非常に本能的です。では、自社商品のテストパッケージをご覧になる時「これは売れるかな、売れないかな」と、まじまじと目を見開いてご覧になっていないでしょうか?
もちろん、社運を賭けて開発した商品です。前のめりで細部までじっくりと観るのが人情です。しかしそれでは買い手の目線にはなっていません。買い手の目線になる一番簡単な方法は「眼を細くして見る」です。
これは、わたくしが会社員時代に商品開発の現場でヒットを飛ばしていた先輩方の仕草を見て気づいたことです。眼を細めることで、今まで気づかなかった商品の「表現」に気づきます。試しに、売り場へ行ってヒット商品やロングセラー商品の前に立って、眼を細めて見てください。何か気づかれるはずです。商品の訴えかける力が伝わってくるのではないでしょうか。
AIやビッグデータの時代ではありますが、商品サービスの現場では実はこうしたアナログ的な感覚が非常に大事です。なぜなら、わたくしたち自身が人間でありアナログだからです。アナログであるということは質量という「実体」があり、この地球上にいる限り本能的な勘に頼って生きていることを示します。ゆえに「本能」に合った商品サービスを作ることがますます求められています。そして今の時代は、わたくしたち人間の「本能」に合った商品こそが「いいもの」として認知されています。
御社の商品サービスを見直す時、お客様の「本能」に刺さる商品サービスになっていますでしょうか? 商品リニューアルの起点としてまずは御社のお客様探究が非常に大事です。
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