人事上の問題が発生したら人事制度を見直す
私は年間に100社から120社の人事制度の構築支援をしています。
その成長塾に参加された経営者への最初の質問は、次の通りです。
「人事制度にどのような問題がありますか?」
ところが、8割以上の経営者は次のようにお答えします。
「上手く機能しません。運用ができていません。
ですから、とにかく見直しをしたいのです。」
問題がどこにあるか見えないままでは、残念ながら、人事制度の見直しはできないのです。
世の中には「○○式人事制度」の考え方が長い間ありました。
「○○」の中には、その人事制度を指導している専門家の名前が入ります。
例えば、私が人事制度のコンサルティングをするのであれば、実態は「松本式人事制度」の説明をすることになります。
なんらその企業に合った、経営者の想いに沿った人事制度を作ることにはなりません。
そのため、○○式人事制度がダメだからといって、□□式人事制度にそっくりまるごと変更しようというやり方は賛成できません。
また変更をしたら、社員はもっと困ることになるでしょうし、決して社員を成長させることにはなりません。
人事制度を見直しするときには、問題点を可視化することからスタートです。
ある成長塾に参加したメンバーは、次のように話をされました。
「当社は、5・6年経つと社員が辞めてしまいます。これからだ、という時なのに……」
社員が定着しないことが問題であれば、その問題を解決するために人事制度を見直します。ただし、この社員が定着しないときの理由は企業によって様々であり、その問題を特定しない限り、どのような見直しをしたらいいのか解決策が明らかになりません。
この会社の場合には、社員が一人前になったら辞めるということを知りましたので、次のように質問しました。
「社員の皆さんは、一人前になってプレーヤーの分野でこの会社に学ぶことがないという状態になったら辞めると言ってきますか?」
「その通りです!」
これで分かりました。
この会社の社員は、この会社には一般・中堅・管理職という成長階層が無いために、もう学ぶことがないと思って辞めていたのです。
もっとも、その経営者は言うでしょう。
「いやいや、この会社には次は人を育てる仕事、そしてその先には私と一緒になって経営をする仕事がありますと常々言っています」
ここが問題です。
社員は経営者の言っていることは信じないのです。
やっていることしか信じません。
つまり、口で言ってもそれを3階層の成長シートとして可視化しない限りはだめなのです。
そして、この会社はその解決策を講じました。
それから4年、辞めたのはたった1人です。
この会社にとってみれば驚き事件でしょう。
私にとっては当たり前のことです。
もっとも、その3階層の成長シートを作ってダメだったらまた見直しをすればいいだけの話です。
問題があったらそれを解決する方法が必ずあります。
それが人事制度の見直し。
人事制度を見直すときには、何が問題かを確認してからその見直しに入ってください。
時間も費用も少なくて済みます。
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