儲かる“不動のストライクゾーン”開発法
新しい時代を迎えました。改元前の1週間は祝賀アイテムの視察で都内の人気スポットを店舗廻訪いたしました。作り手は「祝賀ブーム」を仕掛け、上手にわかりやすい商品リニューアルを実施している店舗がたくさんありました。
一方、作り手の仕掛けとは全く関係ないところで、昨日の東急ハンズは非常に混雑していました。新宿高島屋内にある東急ハンズ新宿店ですが、大型連休とはいえ、東急ハンズ4階売り場の混み具合と殺気立った熱気は異常であり、人、人、人で溢れていました。それにしても混み具合が異常で店員さんにヒアリングしたところ、前日のテレビ番組で売り場が紹介され、店員推しの「洗濯マグちゃん」というお洗濯アイテム目当てにお客さまが殺到。オープン前から長蛇の列だったそう。そのマグちゃんは午前中で完売し欠品。マグちゃんを入手できなかったお客様がそのまま店内を回遊し、売り場が人であふれていたのです。
ハンズの各売り場では雅やかな祝賀ディスプレイで特別コーナーを作り、スイーツや日本酒などの食品だけでなくお箸や茶碗などのライフスタイル商品までが祝賀リニューアルで華やいでいました。しかしどこよりも賑わっていたのが、4階で「マグちゃん」「マグちゃん」とお客様は口々買い求め、うろついていて、圧倒的な熱気に包まれていました。
祝賀ムードを押しのけた生活雑貨・マグちゃん。「改元目前の時代の変わり目」という時に、生活者が殺到しているのはテレビで紹介された「節約便利グッズ」。テレビで紹介されたあの洗濯アイテムを、便利グッズを、魔法の節約アイテムを「見てみたい!!」「使ってみたい!!」「明日にでも欲しい!!」と思い、街まで買いに出てくるのです。生活者のパワーに圧倒されました。
売り手は「祝賀ムード」を設計して、お客様に買っていただく施策を打ち出しますが、生活者の購買行動は非常にシンプルで動物的です。ネットの時代といわれますが、ある世代にとってはテレビの反響はいまだ強く大きいものです。ミレニアル世代にとってはSNSのインフルエンサーが強い影響力を持っています。モノを買う時に、複合的な要素が絡み合っていますが「テレビでとりあげられた」「インフルエンサー ゆうこすが紹介していた」など、心の中に購買のストライクゾーンが必ずあります。
購買のストライクゾーンは生理的な感覚に近くシンプルです。天気が良ければ外出しますし、雨が降っていれば外出せずに家で過ごします。暖かくなれば開放的になり、寒いときは心が縮こまり出不精になります。新しい時代を迎えれば、お祝い事として素直に祝いたいと思います。一方ゆく時代を惜しんだり寂しい気持ちにもなります。
新しい時代になっても、人と人とが出会い愛し合うでしょう。人との別れはさみしく、叶わなかった恋はせつないものです。だれかに否定されれば傷つき、共感されれば安心します。いくつになっても褒められればうれしいでしょうし、隣の芝生がうらやましく映ることもあります。昭和、平成と時代が進化しても、日常のささやかな出来事を、喜んだり怒ったり悲しんだり楽しんだりして生きています。こうした日常的な感覚、心のストライクゾーンは不動です。
最近コンサルティングの現場では「先生、マーケットインとプロダクトアウトですが、ある講師の先生にモノ余りの時代、お客さんのニーズで考えていたらヒットするものなんかでない。プロダクトアウトに寄った方がいいですよ、と言われました。しかし実際にはイノベーションを生み出すような凄いモノを考え出すことなんかではないと思うのですが・・・」という質問を受ける場面が増えています。
製品開発部門であれば生産者発想でありプロダクトアウトが基本的な考え方です。逆に営業・販売部門からは消費者目線のマーケットイン。マーケットインでなければモノは売れない、という姿勢です。こうした考え方は時代の変化に合わせても変わります。例えば昭和から平成時代に入って消費者目線の「マーケットイン」が重要視されてきました。平成末期になってマーケットが超成熟すれば「消費者のニーズからはイノベーションは生まれない」と革新性が求められ、ご質問のように、マーケットインではなくむしろプロダクトアウトが大事だ、という声が強くなります。
そして今、新しい時代はますます二元論を超えてゆくハイブリッドなブレイク、ヒット、ブームが発生してゆきます。「洗濯マグちゃん」の大ブレイクはテレビ取材がきっかけですが、そこに至るまで、コツコツとSNS対策も売り場対策も展開してきているはずです。これからの時代は、ますますお客様に合わせて「媒体」を選び、ストライクゾーンを見極めて、商品戦略を投球してゆくことがポイントです。どのマーケットにおけるプロダクトなのか、が非常に重要です。弊社では商品戦略の「入口」「出口」を設計した上で、弊社ではマーケットイン、プロダクトアウトをプロセス化しています。
商品サービスの作り手は「人間」です。宇宙の視点で見れば、おなじ地球の住人であり、それぞれの国の住人であり、その国その地域のマーケットを動かす生活者です。経営者はじめ製品開発者もひとりの人間、ひとりの生活者です。そこを起点にプロセスを経てプロダクトとして生み出したものを実際のマーケットに投入します。そこからさらに検証しフィードバックし改善してゆきます。仕組みとしてチームに定着させることで、マーケットイン→プロダクトアウト→マーケットインという循環(頭文字をとってMPMと呼んでいます)が生まれます。
まず経営者ご自身が生活者としてひとりの人間に立ち返ること。お客様の生活感覚に近ずくことが非常に重要です。実感としてリアルに感じる「心理」を深掘りしながら「実はこうゆうの欲しかったよね!」という新しい世界観を生み出してお客様に提供することです。そして再び、マーケットの変化に合わせてリニューアルアウトしてゆく姿勢が必要不可欠です。そのための仕組みづくりがとても大事です。
ますます感性を研ぎ澄ませ「人」に向かってゆく時代となります。データを重視し、上手にテクノロジーを活用しながらもある時それらを突き放し、生身のリアルに、生活者実感に向かう相反した思考回路が必要不可欠です。わたくしの商品リニューアルにおいて新しい時代を「人間研究の黎明」と再定義しています。洗練されたテクノロジーと、生身の人間の泥臭さという振り幅、その相反を楽しむ「余白」こそが武器になります。
経営者の思考こそが次代を拓く鍵。令和を迎えた今こそ、頭につまった常識、成功事例、フレームワークをリセットしましょう。
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