調子の良い時に後継社長がしなくてはならないこと
当社は、同族会社と社長の財産管理(お金が残る仕組みづくり)実務の専門機関なので、2代目や3代目社長さんなどの後継社長さんから、実に様々な会社経営にまつわるお金の相談ごとが寄せられます。
多くは、昔から長く存在しているビジネスモデルを主体としていて、既存事業のテコ入れをしたり、第二創業をしたりと、多くの後継社長さんは、幾多の困難を乗り越えて事業を継続させていかなければならない…という苦労があります。
売上構成が1社に依存していたり、特定の業種・業界だけに依存していたりすると、その会社の経営方針や、特定の業種・業界の景気動向によって、自社の業績が大きく左右されることになります。景気がいい時は、目先のスケジュールはイッパイで忙しくなります。社員も皆忙しく働きますし、資金的にも潤っていきます。そのため、ついつい「未来」をつくるための活動を先送りにしてしまいがちで、それが命取りになるのです。
状況が一変して、急に頼りにしていた取引先から取引を減らしたり、見合わせるような通告を受けたら、依存度合いが強ければ強いほど、アッという間に赤字に転落してしまいます。
「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である」伝説の経営コンサルタントと称される故・一倉定氏も、会社経営にまつわる結果責任は、全て社長にあると述べています。
社長からしてみれば、取引先や、業種・業界の動向、はたまた従業員と、自分以外の第三者のせいにしなければ、ココロとアタマの整理がつかないのかもしれません。しかし、自社の未来を決定づける方針や戦略を考え、決断できるのは、社長しかいません。
あくまでも、そのような状態をつくってしまったのは「社長自身」です。どんな結果になろうとも、責任はただ一人「社長」にあるのです。
経営者であれば、調子が「良い時」も「苦しい時」も経験します。「調子が良い時」こそ、「本当の自社の実力か?」「たまたま取引先が上手くいっているからか?」「タイミングや運が良かったからか?」を考え、次に訪れる「苦しい時」に備えなければならないのです。「良い時」にいかに備えられるかで「苦しい時」の時間軸が変わってくるのです。
さらに、調子が「良い時」ほど、間違った節税対策の誘惑が増えます。特に、長年赤字続きだったり、社長に就任したてだったりする場合には税金に対して強い抵抗感を持たれます。
提案という名の節税対策が、銀行員・保険セールスマン・顧問税理士から次々と持ち込まれてきます。その結果、「間違った節税対策」の落とし穴にハマっていくのです。特に、中長期的な節税対策の場合は、そのしわ寄せがボディーブローのように経営を圧迫していきます。
大切なことは「良い時」ほど、いずれ訪れる「苦しい時」を見据えた「先行投資」に資金を投下しつつ、しっかり内部留保する…ということです。取引先を特定の会社や業種・業界に依存しているのであれば、その依存度合いを少しでも引き下げるための打ち手を考え、そこに先行投資したり、売上増や生産性アップのための投資、経営管理体制を強化するための投資など、自社の経営をより強く、盤石なものにするための投資先を正しく見極めることが重要なのです。
すべき時に正しく先行投資をしていなかったり、方法を間違っていたとしたら、苦しい時が底なし沼になってしまいます。大切なことは、社長が自らの財務の視点から必死に考え抜いて「数字」で具体的な未来を描き、行動に移していくことなのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。もっといえば、会社の未来を創ることです。
ダイヤモンド財務®コンサルタント
舘野 愛
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