教育にいくら力をいれても、人は育ちません。そして、もっとまずいことに、会社も成長しません。今御社に必要なのは当たり前の・・・
「誰かが、何かを教えることによって、人は育つのだろうか。」
NO。それで、人が育つことはない。
ある教育者は、次のように言っています。
「その人が本気で、何かを吸収しようという姿勢にならなければならない。」
これを次のように表現したほうが、我々実業をするものとしては、しっくりきます。「具体的な課題を、自分で解決しようと動くこと。」
- 今月中に、展示会ブースの発注をしなければならない。実際の展示会を視に行ってみる。企画書案をつくり先輩にみてもらう。
- お客様に質問をされ、答えられなかった。もっと専門知識を持つために、商品パンフレットを読み込もう。専門図書も買おう。
下記の条件を満たされた時に、人は育つ機会を得ることになります。
「実務に直結する課題であること」
「具体的なアウトプットを迫られること」
そして、「その課題を自分事として受け止められていること」
この時、本人は、本気になります。そして、それを解決するために考え、具体的に動こうとします。これは、「何かを吸収しよう」などというレベルではありません。もっと必死です。
これが優秀な人なら、どんな条件でも自分で吸収していきます。しかし、その他多くの人にとっては、「追い込まれて」が必要になります。追い込まれているから、勉強する、考える、行動するのが正しいのです。本も追い込まれて読むのが、正しいのです。
我々は、彼らに成長する機会を与えることができます。「実務に関した目標(課題)を提供すること」、「具体的なアウトプットを設定すること」、そして、「その課題を自分事として受け止められるように依頼すること」が必要になります。その上で、適宜サポートをすることになります。
人を育てることが下手な会社は、この3つが出来ていません。
「実務の課題を与えていません」・・・多くの外部研修はこの典型となります。さらに進むと、『教育のための課題』をつくり出すことまでします。具体的な成果を求められないプロジェクトや委員会も、これに入ります。
「具体的なアウトプットを求めない」・・・それを行わなくても、レベルが低くとも、「お客様に怒られる」、「職場に居づらくなる」という、切羽詰まったものはありません。当然、「必死さ」は無くなります。
「自分はあくまでも上司のサポート役」・・・その結果責任は、上司にあると考えています。または、本人は「丸投げ」されたと思っています。
その結果、人が育たないことになります。人が育たない会社では、新人だけではなく、中堅社員や管理者までもが、この状態にあります。適切に社員に育つ機会を与えられていないのです。
新入社員は、まずは日々の業務がこなせるように、必死に吸収します。そして、一通り覚えると、その吸収を止めてしまいます。
一年もすると、「慣れ」が見えてきます。いまの業務を本当に「こなす」ようになります。そして、その上司である、中堅社員も、管理者も、こなすだけとなっています。そこに新しいことに挑む対象はありません。
下から、上まで、育つ機会が無い毎日なのです。必死に考えることも、必死に食らいつくことも無く、済んでいくのです。自分を変える、すなわち、成長する必要性がないのです。そのため、会社としても成長しないことになります。
「実務に直結する課題であること」、「具体的なアウトプットを迫られること」。そして、「その課題を自分事として受け止められていること」。
これは、社内にいる誰しもが「常」にしなければなりません。新入社員、中堅、管理者、全員が通常業務をこなしながらも、何かを達成するために考え行動している状態にしなければなりません。会社は、いかなる時も、「追い込まれた」状態を提供しなければなりません。
そうでなければ、並みの社員は、成長を止めることになります。逆に、優秀な人は、スペックを持て余し、辞めていくことになります。
会社として、成長のサイクルを持っている必要があります。
社長が方針を出し、その方針を具体的な目標に落とす。その目標を各管理者に依頼する。管理者は、実現のための方針を示し、目標を細分化し、その実行を各部下に割り振る。適宜進捗を確認し、必要があれば、修正またはサポートし、実現にこぎつける。
社長が出した方針から現場のスタッフの作業までが、繋がります。このサイクルによって、毎期の目標はなんとか達成されます。そして、少し仕組みは良くなります。会社として育つことになります。
そして、この裏で、社内の誰しもが育つことになります。
一つの目標が達成された裏には、誰かの成長があります。一つの仕組みが改善された裏には、誰かの勉強があるのです。当然、その誰かが社長ではいけません。
お客様や環境の変化に合わせ、社内の業務を改善していきます。また、それ以上のスピードで成長するために、どんどん取り入れていきます。その変化に追いつけ、追い越せのために、すべての社員が必死なのです。
会社がスピード持って成長するためには、全員に「今の自分ではできないこと」を受け持ってもらう必要があります。誰一人として、「現状維持」はありえないのです。全員に目標すなわち課題が与えられています。
- 中堅社員は、企画書の作成やマニュアルの改定をします。その間に、通常の業務もこなします。その合間に、新人を教えます。業務の改善や後輩を教えるために、本を読みます。
- 管理者は、方策を絞るために、セミナーに参加します。また、部署の運営を勉強するための本も読み始めます。
- 社長は、自社の戦略や方針を決定(変更)するために、本、セミナー、専門家から勉強します。
会社の成長は、誰かの成長によって支えられます。そして、その誰かの成長は、会社としての成長のサイクルによって、引き出されます。
「会社の成長のサイクル」と大層な表現をしていますが、実際には、企業としての「当たり前」のサイクルなのです。
この当たり前のサイクルを持っている企業は、強いのです。出された方針に合わせ、どんどん自らを作り変えていきます。今日も、社内の誰しもが課題を持って、働いています。
逆に、この当たり前のサイクルを持たない会社は、弱いのです。むちゃくちゃ弱いのです。方針が出されても、その多くが消えていきます。毎日、誰もが坦々と作業をしています。社長ひとりが考えています。優秀な人が抜けていっています。
人を育てるためには、その機会を与えることが必要です。それは、本業の中で行われます。
そのために、特別に教育制度や研修を設けることはありません。それらは、あくまでも補助的なものとなります。教育や人材育成というものは、概念であり、それが実際に存在することはないのです。
学生は、勉学に励む過程で育ちます。
スポーツ選手は、その向上の追求で、人間として磨かれます。
我々は、目の前の課題に懸命に取り組むことで、成長も充実も得ることができます。
組織としての当たり前の成長サイクルを築くことしか、それは手に入らないのです。彼らにも、成長する機会をお与えください。それを提供できる機会を持つのは、社長しかいません。
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