商品が踊りでる!商品リニューアルの「さんま理論」
ネーミング、デザイン、コンセプト、売り方、見せ方を変えたらもっとお客様に喜んでいただける、「リニューアルをかけてぜひお客様に出会わせてあげたい! 」そう感じさせる良品、魅力が眠っている既存商品がたくさんあります。
今の時代、ほとんどの商品サービスは粒ぞろいです。かつてお客様が喜んで求めてくれた商品があるならば、それこそが「宝」です。売れなくなってきているのは、多くの場合「時代の空気感にあっていない」「顧客の変化に気がついていない」ゆえに「顧客をわくわくさせていない」という原因があります。こうしたことはデータではわからないことです。「数字」では現われてこない部分を視る必要があります。
わたくしの商品リニューアルも時代の変化に合わせて日々リニューアルしています。もちろん、変わらない根幹はありますが、変化するお客様の心理に合わせてブラッシュアップし、より時代にあったプログラムを提供しています。
日々更新しているわたくしの商品リニューアルはマーケテイング等の外来知識を模したものではなく、私自身が昭和と平成というふたつの時代を通して関わってきた商品プロデュースの現場経験と、幼少、学生、社会人、単身時代を経て妻となり母となり、親を見送るといったライフコースで体得した強い生活実感と、プロと生活者の両面から「商品サービス」をリアルに体験している経験知、思考を基盤としています。こうすればお客様がわくわくしますよ、というポイントは、残念ながら過去の教科書には書いていません。事業の逆算をした上で、今の空気感から軌道を修正することがとても大事です。
弊社では「こう軌道修正したら売れるようになりますよ」という打ち手のひとつに「商品リニューアルのさんま理論」というものがあります。今トレンドのサバやイワシといった青魚パワーのごとく力のある大切な着眼ですが「秋刀魚」のことではありません。
「さんま」とは3つの「間」を指しています。復活させたい既存商品サービスに「てま・ひま・こま」という、この3つの「ま」を切り口としリニューアルしていきます。本来は仕組みを基盤とした理論ですので、コンサルティングの現場でしっかりとお伝えしなければなりません。コラムではヒントとして、エッセンスをお伝えします。
- 「てま」とは「手間」を意味します。商品サービスをひとひねりして「手がかかる」ものにリニューアルすること。五感で感じる商品リニューアルです。
- 「ひま」とは時間を指します。「速い」「効率」といったネット時代の価値観の逆張りです。時間経過こそが価値となる商品サービスにリニューアルすること。
- 「こま」とは「場面」。映画のコマ割りという言葉があるように、商品サービスの使う場面をリニューアルする着眼です。短くカットしたり、くっつけたりして、新しい物語をつくっていきます。
今なんといっても話題なのが中目黒に2月末開業した「スターバックス リザーブ ロースタリー」です。世界で5店舗目の出店です。東京近郊では豆焙煎のコーヒーショップがこの20年で急増しました。街のコーヒーショップにおいては、グローバル企業が参入してきたわけですから、商品サービスのリニューアルが非常に大事になってきます。
先日うかがったコーヒーショップでは、喫茶コーナーで新しいメニューがスタートしました。それは「定番ブレンドテイスティングセット」です。デミタス用カップに入った2種類のコーヒーを楽しむセットで、税込648円。定番の豆、2種類のティスティングです。例えば、スターバックスに行くと、レジ待ちの間に小さなカップに入ったテイスティング用のコーヒーをいただくことがあります。もちろん無料のサービスです。このコーヒーショップでは、スターバックスの無料テイスティングコーヒーを2種類セットにしてお金をいただくイメージです。まさに逆張り発想であり、さんま理論における「てま/手間」のリニューアルです。
まずお客視点で考えてみましょう。小さなデミタスカップに2種類のコーヒーです。第一印象は違和感です。「ちまちま」っとしたスケール感の小さな世界です。飲む「手間」を感じました。しかし同時に沸き起こってきたのが「いろいろを楽しめるな、楽しそうだな」「いろんな香りを知りたいな、知ってみたいな」という欲求です。もちろん、女性はこの「いろいろ」に魅力を感じる生きものです。小さくちまちましたものが好きです。そして、テイスティングすることで、定番ブレンドの「豆」を選ぶときの参考にもなって、ちょっと賢くなるような、お得な感じもします。さらに、焙煎しているプロのスタッフが「お好みはどちらですか?」と丁寧に説明してくれることもまた嬉しいのです。この世界観、日本酒で成功した「利き酒セット」と同じです。
お店視点で考えてみましょう。オペレーション的には、小さくすることでさまざまな「手間」が発生します。ですが、提供するときにはプロとしてのトークが求められます。焙煎コーヒーショップですから、この「トーク」こそが強みです。お客様とのコミュニケーションが自然な形で生まれ、また喜ばれてスタッフのモチベーションにつながります。カップやトレイなどツールさえ整えば強みを発揮できて、お客様もお店もハートウォーミングな商品です。リアル店舗の強みをいかして、まずはテストマーケティングをし、女性客を中心にとても好評だったゆえに継続しています。
「さんま理論」は基盤となる仕組みが必要不可欠です。包括的な商品リニューアルの仕組みを作ってゆくことが本筋です。当たり前のことですが付け焼き刃ではない取り組みこそがビジネスの本質となります。したがって既存商品を活かすも殺すも経営者さまの考え方次第です。既存商品を捨てて壊して新しいものを果敢に造ってゆく。既存商品を売れないままダラダラと売っていく。既存商品を忘却する。ビジネスのスタンスも、戦い方も100社百様です。正解はない、そう言うこともできます。ですが「お客様がどう見ているか」「お客様が何を欲しているか」には、その時代時代、刻々とした方向性があります。
今のお客様は「独創」と「真似」を見分ける眼をシビアに持っています。お客様の審「品」眼をあなどってはなりません。弊社の「さんま理論」は、お客様が求めている方向性そのものから生まれています。既存商品の眠っている魅力、角度を変えれば今の時代にとって魅力となる潜在的商品力はどこか。安易に他社のマネをしないで考え抜く姿勢が要請されています。「てま」「ひま」「こま」という弊社の「さんま理論」は、煮詰まった既成概念や業界のルール、そしてわたしくたちの凝り固まった常識を打破するヒントです。ぜひ活用してみてください。自社の既存商品をその時代時代に合わせてリニューアルしながら、大事に、大輪に育てあげることこそ経営の本質であり、喜びの道です。
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