管理は古い?できる経営者は3つの「間」を共有している
「あの小島さんが先行管理にこだわるとは…。私は、とことん悩みぬいた結果、管理には限界があると思うんですがねぇ…。」
数年前。N社長は、首を傾げながら小島に質問を投げかけました。
N社長との出会いは12年前。利害を脇に置き、たびたび近況を報告しあう間柄。とても尊敬している経営者の一人です。
「小島さんは、いつも柔軟な発想で活動してきたじゃないですか。それなのに、コンサルティングの重点テーマを管理にするんですか?せっかく独立してやっているのにもったいないですよ。」
N社長は、赤字続きの会社を先代から引き継ぎました。主力事業の市場が縮小し続ける中、試行錯誤を繰り返しました。この10年で、下請け体質を見事に克服しました。儲かる戦略を考え抜き、それを実現するために <働きがいを重視した職場環境づくり> に徹してきました。 “管理主体” から “働きがい主体” のマネジメントに切り替えてきたのです。新規事業も複数軌道にのせ、収益性も大幅に改善しました。今では成功事例として、複数のメディアで取り上げられています。こういった背景もあり、下請け時代に要求されていた「管理」という言葉に抵抗感がありました。
「N社長。実は違うんですよ。業績3年 先行管理は、ある意味“管理を超えた管理”つまり、創造性を発揮するための管理なんですよ。3つの間がポイントです。」
小島は、雇われコンサルタントとしてコンサルティング会社に勤務していた頃、上司に管理されること人一倍嫌っていました。経営者になった今では、管理の重要性もわかります。しかし、当時は軍隊式の管理姿勢に「自身の創造性を潰されてしまうのでは」と危機感を持っていました。
また当時から、創造性を引き出すアプローチも研究し続けました。やがて、管理の良い側面が見えてきました。できる経営者は「3つの間」を巧みに管理・共有し、組織の力を引き出していたからです。どのようにしたら、良い側面を仕組みに落とし込めるのか、試行錯誤を繰り返し、新たな先行管理の手法を体系化しました。
「3つの間とは、どういうことですか?」
今回は、このできる経営者が管理・共有している「3つの間」について、ご紹介します。
■1.時間(トキの間)を管理・共有する経営者は、点を線にする
時間軸を < 過去 → 現在 → 未来 > とイメージしてください。
経営者は、我が社の将来を見据え、先手を打つことを考えてます。時間軸で言えば、未来に焦点を当てています。その一方で、社員は、目の前の業務に注力しています。現在に焦点を当てています。
経営者の思いが社員に伝わらない理由。それは、異なる時間軸に身をおいたまま、組織を導こうとしているからです。
できる経営者は違います。時間(トキの間)を管理・共有しています。いったいどのようにしているのでしょうか。
それは、現在と未来という時間を巧みにつないでいるのです。トキの間を、「近い未来の業績」という形で見える化し、社員と共通認識しているのです。
経営者は、将来実現したい理想の我が社から逆算し、近い未来の「業績目標」を設定します。社員は、現状から、近い未来の「業績の現実的な着地見通し」を試算します。すると、目標と着地見通しの差が明らかになります。この共通認識ができれば、両者の関係性が変わります。どのように差を埋めるのか、共に対策を考え実行できるようになるからです。
トキの間の理想は、3年先です。もちろん、はじめから3年先を試算するのは不可能です。まずは1ヶ月先という小さな一歩からスタートします。そして、3ヶ月、6ヶ月、1年、3年先と着地見通しを試算できるようにしていきます。
同時に月次決算の実績も踏まえ、過去 → 現在 → 未来 と時間軸をつないだ <業績先行管理の仕組み> をつくります。時間(ときの間)を管理・共有する経営者は、たったこれだけで 【社長VS社員】 という関係を 【社長&社員→社会】 という関係に変化させているのです。
<参考>:時間軸を分断したままで管理をするとどうなるのか。次のような弊害がでてきます。
【NG(1)】
例えば過去。結果管理です。評価の要素として必要ですが、過去は変えられません。社員は他人や環境に責任をなすりつけ自己防衛に走ります。もしくは、自己を否定し機能不全になります。おすすめできません。
【NG(2)】
次に現在。タスク管理です。プロセス管理とも言います。「やったか・やらなかったか」という行動が重視されるため、本来の目的が蔑ろになります。闇雲に行動しても目的は達成できません。プロセスの分解や行動量の集計も煩雑になります。こちらも、おすすめできません。
【NG(3)】
そして未来。中期経営計画です。計画のままでは、単なる妄想です。ひどい場合は、毎年計画をローリングし、ほとんど進展しない会社もあります。経営資源の無駄遣いです。
【NG(4)】
最後に近すぎる未来。短期の先行管理です。管理好きの古いコンサルタントは、1~3ヶ月、長くても6ヶ月先の先行管理を推奨しています。しかし、近すぎる未来では、戦い方のルールを変えることはできません。現状のルールで3倍行動しろ!という愚策に走ります。そのため上司が部下に「つべこべ言わず。絶対やれよ!いいからやれよ!」と恐怖で動かすことになります。本末転倒です。
導入直後やコンサルティング期間は、それなりに結果が出ます。そのため、経営者は「良い取り組みをしている」と勘違いをしてしまいます。しかし、この間に、組織の土台が腐敗していくのです。数年後、取り返しのつかない状況が表面化し、愕然とするでしょう。
■2.空間(キョリの間)を共有する経営者は、線を面にする
空間軸を < 社内の各部門や階層、社内と社外(社会) > とイメージしてください。
経営者は、社内と社外、全体を見て、何ができるのかに注力しています。空間軸で言えば、視野を広げ俯瞰しています。広い視野を基準に、我が社がやるべきことを推測しています。そして、社員との温度差に直面し、不平不満を感じています。
なぜなら、社員は、自部門や自身の立場(役職など)といった限られた範囲を見て、「上司に怒られないように」と、個人の安全を確保することに注力しているからです。狭い視野のまま、限定した情報しか認識していません。
経営者の思いが社員に伝わらない理由。それは、異なる空間軸に身をおいたまま、組織を導こうとしているからです。
できる経営者は、違います。空間(キョリの間)を管理・共有しています。いったいどのようにしているのでしょうか。
それは、各現場や各階層と全社、全社と社会(お客さま)の空間を巧みにつないでいるのです。キョリの間を、提供する価値という形で見える化し、社員と共通認識しているのです。
経営者は、我が社と競合と顧客のバランスから逆算し、我が社が「提供すべき価値」を設定します。社員は、自部門・自身の立場(役職など)から、現段階で「提供できる業務」をこなします。すると、提供すべき価値と提供できる価値の差が明らかになります。この共通認識ができれば、両者の関係性が変わります。どのように差を埋めるのか、共に対策を考え実行できるようになります。
組織の内側に向いていた視点を、どれだけ外側に切り替えられるのか。内向きに浪費していたエネルギーを、価値を創造するエネルギーとして、外向きにどれだけ活用できるのか。認識する空間(キョリの間)を広げ、価値を提供する立場・役割であることを自覚する。社内 → 社会へ と空間軸をつなぎ、今後、我が社が提供すべき価値に専念する。それを業績に換算する<業績先行管理の仕組み>をつくっています。
空間(キョリの間)を管理・共有する経営者は、たったこれだけで 【社長VS社員】 という関係を 【社長&社員→社会】 という関係に変化させているのです。
■3.人間(ヒトの間)を共有する経営者は、面を立体にする
人間軸を < 自分・相手・組織・社会 × 自己犠牲・自己活用 > とイメージしてください。
経営者は、自身の欲望を満たしつつ、他の誰かのために何ができるのかを探求しています。人間軸で言えば、「自分」を活かし「社会」に貢献する視点をもっています。
その一方で、社員は、自己犠牲で組織を支えていると酔いしれたり、自身の欲望を手っ取り早く満たすことを優先したりします。狭い視野のまま、歪んだ形で自身の存在価値を味わっているのです。
経営者の思いが社員に伝わらない理由。それは、異なる人間軸に身をおいたまま、意思疎通を図ろうとしているからです。
できる経営者は、違います。人間(ヒトの間)を管理・共有しています。いったいどのようにしているのでしょうか。
それは、エゴで分離した個人を、互いを理解しあうことで統合させ、運命共同体にしているのです。個人、チーム、組織、全社、社会といった人間(ヒトの間)を巧みにつないでいます。ヒトの間を、お互いを理解する仕組みで見える化し、社員と共通認識しているのです。
経営者は、相互理解が進む仕組みをつくります。上司と部下、社長と社員、部門と部門、我が社と社会、互いの目的が一致することを伝え、それが実現する環境を整備します。
社員は、「仕事で関わる人々が、共通の目的・目標を達成するための同士であること」を確認します。すると、自己責任の意識が芽生え、自己をどのように活かすのかを考えます。そして、相手の立場を踏まえた行動ができるようになります。もし、不十分な部分があれば、それをどのように埋めるのか、対策を共に考え実行できるようになります。
互いに足を引っ張るのではなく、協力し合う関係性を構築する。人間(ヒトの間)をつなげ、運命共同体であることを、どれだけ自覚できるのか。自分 → 相手 → 組織 → 社会へ と人間軸をつなぎ活動します。それを業績に換算する<業績先行管理の仕組み>をつくっています。
人間(ヒトの間)を管理・共有する経営者は、たったこれだけで 【社長VS社員】 という関係を 【社長&社員→社会】 という関係に変化させているのです。
■4.できる経営者は、3つの間で社員と共通認識している
・時間(トキの間)
・空間(キョリの間)
・人間(ヒトの間)
できる経営者は、この3つの間を使いこなしています。
社長と社員。互いの視野を広げています。共通認識から相互協力を促す仕組みを構築しています。点から線へ、線から面へ、面から立体へ、バラバラになった組織を巧みに統合させています。
このとき、かつての工業化社会では、規律のための規律が必要でした。規格品を低コストで作るために、効率よく作業をこなす。強制力で社員を動かすことが常套手段でした。そのため、金太郎飴のように社員を量産し、画一的に指示命令できればよかったのです。
しかし、現在は、多様性の時代です。新たな価値を生み出すために、異なるレベルの規律が必要です。環境変化に柔軟に適応できるように、新たな価値を創造する。単純に強制力で対応することは、不可能です。
3つの間を巧みに管理・共有する。つまり、社員一人ひとりの多様性を受け入れ、相互協力しあう体制をつくる。オーケストラの指揮者のように、個々の強みを引き出し、組織の成果につなげなければならないのです。
同じオーケストラでも、指揮者の意図一つで奏でる曲調が全く異なります。同様に、同じ業績先行管理でも、意図一つで、全く異なったツールになります。
絶対を掲げ強制力で社員を支配するのか、多様性を引き出し運命共同体として価値を創造するのか。我が社を健全に成長させるためには、後者の関わり方を土台にしてください。
「N社長。管理を狭い意味でとらえると、確かに弊害だらけです。小島も反対です。しかし、広い意味で管理をとらえると可能性が広がります。新たな価値を生み出すために、3つの間を管理する。社長は、これを肌感覚でやっていたのではないでしょうか。」
N社長のように、肌感覚で3つの間を管理する経営者もいます。このレベルにたどり着くまでには、10年、20年という歳月をかけています。その一方で、仕組みで管理する経営者もいます。3つの間を使いこなすために、新たな仕組みを整備する。これを1~3年程度で定着させる会社もあります。
いずれにせよ一足飛びには実現しないでしょう。3つの間の方向性を意図しながら、一歩ずつ成長していく。遠回りのように見えますが、これが原理原則です。
確実に一歩ずつ成長していくのか、劇薬を飲んで一時的に良くなったように見せかけるのか。御社は、3つの間を管理・共有するために、どのような仕組みを構築しますか?
追伸>
弊社は、【業績3年 先行管理】という切り口で、3つの間を管理・共有することをおすすめしております。たったこれだけで 【社長VS社員】 という関係を 【社長&社員→社会】 という関係に変化させる仕組みです。仕組みづくりにお悩みの経営者様は、ぜひセミナーにご参加ください。
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