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「効率を追求する生産性」と「付加価値を追求する生産性」の違い

SPECIAL

ホスピタリティビジネスコンサルタント

ザ・ホスピタリティチーム株式会社

代表取締役 

「お金になるホスピタリティビジネス」構築の専門コンサルタント。ホテルやウェディングビジネスのみならず、異業種のホスピタリティを軸とした新ビジネス立ち上げも指導。

人手不足、労使問題、働き方改革など、経営に関して生産性向上がより重要性を増す中、製造業に比べてサービス業の生産性が低いことが、日本の産業全体の大きな課題となっています。

しかし、20世紀はモノを作れば売れるという時代だったのに対して、21世紀はモノは溢れ、モノより精神的充足を求める時代となり、それもあって日本の産業の75%はサービス産業となり、産業の中心となっています。

それでは、何故、サービス産業の生産性が低いのでしょうか?

それにはサービスの次の6つの特性が関係しています。

1.無形性

  サービスにはカタチが無い

2.異質性

  提供する人によって、質が変わる

3.非貯蓄性

  保存することや在庫を持つことができない

4.非可逆性

  一度提供されたものは元に戻すことができない

5.生産と消費の同時性

  生産と消費が同時に行われる

6.需要の時期集中性

  時期、時間、曜日によって集中して分散できない

これらからも分かるように、サービスは基本的に在庫を持つことが不可能であり、生産と消費が同時に行われるので、予め仕込んでおけることに限界があり、効率化をすれば提供するサービスの質にも影響を与えます。

そして更に需要も一定ではなく集中、閑散の波があり、労働力のコントロールにも限界があります。

一方、製造業は、在庫を持つことができ、生産と消費の機会が別なので、生産に集中でき、生産量や労働力のコントロールがし易くがサービス業に比べて生産性が高いのも当然と言えます。

しかし、これからの時代、日本全体のサービス産業化は更に進むと言われており、生産性の向上は日本の産業全体の重要な課題となっています。

そもそも生産性とは式で表すと、

生産性= 付加価値(利益) ÷ 労働投入量(労働者数・総労働時間)

となります。

つまり、今よりも付加価値を高めて利益を確保するか、

労働投入量を減らすかによって、生産性が向上するかどうかが決まります。

世の中の動きで言えば、生産性を上げる=労働投入量を減らす動きが一般的です。

例えば、業務のシステム化、残業の削減等により労働投入量を減らす動きや、小売り業を中心にAIを活用し、スーパーマーケットで今までは各レジにスタッフを配置して精算をしていたところから、商品に付けてあるICチップから値段を読み取り、精算機に置くだけで料金が分かり、精算できる仕組みも導入され始めています。

そうすればレジの周りにはその案内役を数人配置するだけで済むようになり、労働投入量を削減でき、生産性は上がります。

このような動きは、サービス自体にあまり期待値が高くない業種を中心に更に進むでしょう。

これはこれで、これからの社会の動きの中、労働人口が減少する中で止められない流れであることも事実です。

しかし、そればかりを追い求めると、一般的な消費は人を介しないで済ませることができてしまうような何ともつまらない世の中になってしまうような気もします。

それに比べると付加価値を上げる動きは少ないように感じます。

今ある商品やサービスを磨いて、今の価格に付加価値をプラスして利益額を上げることで生産性を上げることも重要です。

例えば、星野リゾートは地方の旅館再生してソフトオペレーションで付加価値を提供して、1泊1万5千円だった宿泊費を4万円で販売しても満室状態が続いています。

このように商品・サービスの高付加価値化を図り、利益を確保するやり方がある一方で、もうひとつ大切なのは、従業員のやる気を高めることによる付加価値の向上です。

例えばあるホテルでは、それまで無かった経営理念を策定し、そのホテルの考え方や価値観を一般の従業員まで浸透させる取り組みをすることで、従業員ひとりひとりが、自社の考え方、顧客、社会への貢献の仕方に共感し、自社で働くことに対して誇りを持ち、会社に対するロイヤリティ(忠誠心)やエンゲージメント(会社との絆)が高まることで、顧客に自発的に商品を提案したり、キラキラしたスタッフからサービスを受けることにより顧客満足度が向上し、大きく売上を伸ばしたケースがありました。

このようなケースは労働量は変わらずに、従業員のやる気を高めて付加価値を向上させることにより生産性が向上した事例です。

ただ単に、生産性を上げる=労働投入量の削減と考えると、それは従業員にとっては、ただ単に会社の都合としか捉えられなく、労働時間内の業務の密度を濃くすることを従業員に強いても、残業代は減って収入は減り、労働時間内は忙しくなるだけで、短期的な成果は出ても、長期的には組織は疲弊します。

それよりも、従業員が自分の会社、仕事に誇りを持ち、自社のロイヤリティが増せば、自発的に自社の商品を勝手に販売し、上辺ではなく心からのサービスを提供すれば、顧客満足度が増し、売上も上がります。

それが即ち 生産性UP=付加価値額の向上

に繋がるはずです。

いずれにしても、労働投入量を減らすだけの生産性向上は、大切な自社の従業員を疲弊することに繋がる可能性があることも加味しながら、付加価値を上げることとバランス良く取り組むことが重要です。

あなたの会社は、

生産性を上げる=付加価値の向上ですか?

それとも、労働力の削減ですか?

 

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