情報発信の「定量要因」と「定性要因」を考える―社長には発信すべき貴重な情報資産が内包されている―
ある会合で知り合いの社長さんに質問されたことです。
「海江田さんは「情報発信」の重要性を盛んに言われるが、そもそも私たち経営者らしい「情報発信」なんてあるのかね。ほかの「情報発信」とどこか違うポイントがあるのかどうかが、私にはよくわからないのだが・・・」
なるほど、わりと核心を射た質問です。
私に言わせれば「経営者らしい『情報発信』」という特徴は間違いなくあります。
それがなければ、そもそも苦心して「情報発信」する意味がありません。
それは、その「情報発信」が、やがて自らの事業に、何らかの形でプラスの効果として返ってくるということです。
その効果が期待できなければ、そもそも「情報発信」する意味などないことになります。ということは、経営者の「情報発信」には、将来におけるそういった効果を期待できるだけの内容が伴っていなければならない、という一種の使命のような役割があるのです。
改めて基本的なことを申し上げますが、社長の「情報発信」には、その内容にきちんとした「質」が確保されていなければなりません。
と、同時にある程度の「量」もなければ、多くの人に認知されることは難しいでしょう。
つまり、社長の「情報発信」というのは、一定レベル以上の「質」と「量」が必要なのです。
これが一般の人が、日常の中で軽く発信しているSNSへの投稿、或いは個人的な好みや趣味で書くブログやコラムなどと一線を画すところなのです。
つまり、経営者らしい「情報発信」を担保するのは、その「質」を保証する「定性要因」と、その「量」を確保する「定量要因」の両者ということになります。
今回は、この両者について述べてみたいと思います。
まず、「量」を確保するために大切なのは、なんといっても「継続性」ということになります。
大手企業は、マスメディアなどを通じて瞬間的に大量の広告を打つことができます。つまり、「情報発信」に必要な「量」の問題を、多額の資金を投入することで解決できるのです。
これに対して、予算に限りのある中小企業に、これと同じ方法を採用することはできません。媒体であるマスメディアに、大きな広告宣伝費を投入することは不可能なのです。
一方、SNSなどを通じた「情報発信」が、使い方によっては、多額の費用をかけた広告宣伝に匹敵するというのは、以前から申し上げている通りです。
中小企業の場合、大企業のように瞬間的に大量のCMを打つことができませんので、「情報発信」を継続する、という時間軸でのトータルで「量」を確保するしかないのです。
幸いにしてSNSなどで発進した情報はそのまま蓄積されます。
ということは、「情報発信」を頑張って継続すれば、いつでも検索可能なアーカイブとして残ることになります。この蓄積された情報が、時間が経つにしたがって、膨大な「量」の「情報資産」として確保されていくわけです。
以前は、個人や中小企業のレベルでこんなすごい無形の資産を持つことなど考えられませんでした。そんな手段も媒体も世の中に存在しなかったからです。
また、ラジオやテレビ、或いは地方紙などで発進した情報もそれをキープし、再発信することが可能です。新聞のコラムや取り上げられた記事などは、そのままウエブ上に掲載できますし、ラジオやテレビに出演した際の音声や映像も、自身のHP(ホームページ)などで繰り返し発信することが可能だからです。
こんな風に、それまで展開した「情報発信」を、ネット媒体を通じて様々な形態で繰り返し再発信すれば、かなりの「情報量」を世の中に拡散することになります。
これは、一昔前であれば全く考えられなかったことで、現代経営に必須の「情報発信」を可能にした画期的なテクノロジーなのです。
ところが、その発展と普及があまりにも急速だったので、多くの企業経営者はその威力の本質にまだ気づいていません。
これから着々と準備して「量」の確保を行なうことは不可能ではありません。すぐにでも「情報発信」に取り掛かるべきなのです。
さて、「量」に関する課題は、頑張って「情報発信」を継続することで、ある程度解決することができます。
この「量」にもまして大きな課題なのは、その発信する情報の「質」ということになります。
先述しましたように、経営者の「情報発信」は、一般の人が、日常の中で軽く発信しているSNSへの投稿、或いは個人的な好みや趣味で書くブログやコラムなどとは一線を画さなければなりません。
それは、経営者の発信する情報が、常に自らのビジネスと繋がったものでなければならないからです。
そこで語られるのは、自らの専門性であり、鋭い切り口であり、深い洞察力といったことになります。
経営者という立場であれば、普段向き合わざるを得ない様々な課題が、「情報発信」のネタとなります。こういった課題に対して、常に考察を加えそれにきちんとしたコメントを加えることができれば、経営者らしい「情報発信」になるのです。
こういう風に書いてきますと「そんなハードルは俺には無理無理!とても対処できないよ。」という声が聞こえてきそうですが、これは少しまじめに硬く書いたのであって、何も初めからそんなに肩ひじ張る必要はありません。
最初は、あくまでも、そういったレベルが要求されるのだ、という自覚だけあればいいと思います。
そもそも、経営者は積極的に「情報発信」すべし、と私が推進する原点は、
「社長が積み重ねてきたキャリア、経験、ノウハウは、埋もれさせてはもったいない貴重な企業資産である。」
という発想から始まっています。
社長には、すでに発信すべき貴重な情報資産が内包されているのです。
それを解放させる経営者があまりに少ないので、もったいないことになっている、と私は思っています。
この「質」の問題は「量」をこなしていれば、やがて解決されていきます。
とにかく、一刻も早く経営者は自らが先頭に立って、己の事業に関する「情報発信」を始めるべきなのです。
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