○○を使いこなせば資金は増える
当社は、同族会社と社長の財産管理(お金が残る仕組みづくり)実務の専門機関なので、会社経営にまつわるお金の相談ごとが寄せられます。「事業は順調なはずなのに、いつもお金がない」「借金が思うように減っていかない」「先代社長からの財産承継が終わっていなくて『争族』が心配」などなど、実に様々です。
会社と社長さん自身の状況によってアプローチは変化してきますが、一方で、9割以上の社長さんに共通していることがあります。
20年近くにわたって300人以上の同族社長と関わってきた経験からいえることは、9割以上の社長が「貸借対照表(BS)を見ないで経営をしている」ということです。言い換えると「貸借対照表(BS)の見方を教えてくれる身近な存在がいない」「貸借対照表(BS)の見方がわからないのが当たり前になっている」といったところでしょうか。
少なくとも社歴が10年以上ある会社であれば、社長が「自分の会社の貸借対照表(BS)の見方がわからない」というのは、ハッキリいって致命的です。
社歴が30年以上あるような会社であれば、貸借対照表(BS)には、創業時から積み重ねてきている歴史とともに、その会社らしさが数字とともに表れてきます。社長はその点を理解した上で、意図して貸借対照表(BS)を磨き上げるという視点を持たなければならないのです。
損益計算書(PL)に関して言えば、足し算と引き算だけなので、多くの社長にとって理解に苦しむようなものではありません。特に、事業が一つだけという場合や、在庫・固定資産などがないビジネスであれば、大変シンプルな構造になります。
ですが、貸借対照表(BS)になると、とたんに多くの経営者が敬遠しだすのです。先にもお伝えした「貸借対照表(BS)の見方を教えてくれる身近な存在がいない」にも共通するのかもしれません。ですが、金融機関の融資担当者やプロの職業会計人などは、損益計算書(PL)はソコソコに、貸借対照表(BS)を最も重視して入念にチェックします。損益計算書(PL)はごまかせても、貸借対照表(BS)はウソをつけないからです。
会社のお金のことがわからない、数字のことが苦手…という社長の会社の決算書を見ると「仮払金」「仮受金」などがズラリ並んでいるものです。「仮払金」や「仮受金」の額があまりにも多いと「この社長はきっとお金にルーズなんだろうな」と憶測されてしまいます。あるいは、会社の決算書に「役員貸付金」があれば、「社長は、生活資金に困っているのかな」「会社の資金を個人資金に流用しているのでは」と思われるのは必然です。
あなたの会社はどうでしょうか。自分の会社の貸借対照表(BS)がどうなっていて、それが第三者にどのようにみられているのかを考えたことはありますか。大切なことは、自分の会社の貸借対照表(BS)の現状を正しく認識した上で、将来に向かってどんな貸借対照表(BS)を目指すべきなのかを数字で具体的に考えることなのです。
その上で、貸借対照表(BS)を使いこなすことこそが、売上も借金も増やすことなく資金を増やすための第一歩なのです。9割以上の社長は、貸借対照表(BS)を見ないで経営しているため、売上も借金も増やすことなく資金を増やすという極意を知りません。それは、本当にもったいないことなのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。もっといえば、会社の未来を創ることです。
ダイヤモンド財務®コンサルタント
舘野 愛
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