「情報発信」を長く続けるコツとその効果―常に「問題意識」を持つことの意義―
経営者が「情報発信」を続けていれば、必ずと言っていいほど「ネタ」に困る時期が出てきます。
当初、自社の持つストーリーやエピソードなど、あらかじめ準備したコンテンツでかなりのところまで行けるのですが、やがてそこから発生させた横展開や多少の応用を効かしたバリエーション展開なども、それだけではなかなか厳しくなってくるのです。
これは、ある意味当たり前のことで、私のお勧めする「情報発信」そのものが終わりのない長期戦ですので、初めかなりまとまった分量のコンテンツを、経営者と一緒に用意するとはいえ、いつまでもそのストックに頼っていたのでは、足りるはずがありません。
さて、こんなときいったいどうすればいいのでしょうか。
ここで考えなければならないのは、「どうすればいいか・・」というよりは「どう考えればいいのか・・・」ということなのです。
それは、経営者の「情報発信」を、単なる方法論で考えていたのではきりがないからです。
「情報発信」が単なる作業となってしまったのでは、ネタを探しては発表する、また探しては発表する、という単なるワークの繰り返しになってしまうことになります。これは経営者の「情報発信」が、肝心の企業活動から遊離してしまい、単なる一つの作業になってしまった姿にほかなりません。
その結果、冒頭の「ネタ」に困る、といった表現が出てくるのです。私は、このコラムの入口をわかりやすいものにするために、「ネタ」に困る、という表現を使いましたが、常に「情報発信」に本質的に向き合っていれば「ネタ」に困る、という現象は出てきません。
どうしてそうなるのでしょうか。
それは「情報発信」が常態として「問題意識」を持つ、ということとリンクすればそう(「ネタ」に困ることに)はならないからです。
企業活動には、常に何かしらの「問題」や「課題」が付きまといます。これらが全くないという企業はあり得ないでしょう。もし、そんな企業が存在するとすれば、「課題」や「問題」があるにもかかわらず、それを無視するか気づいていないか、ということになり、これはこれで大きな問題なのです。
なかなか解決できないでいる「問題」や「課題」が存在し、常にそのことに向き合い思考を重ねている、という状況が企業のあるべき姿といえましょう。とすれば、それを発信していけばいいことになり、「情報発信」の内容に事欠くことはないはずです。
そもそも「問題意識」を持つ、ということには2重のプラス効果があります。
それは常に「問題」や「課題」がないか意識しているために、自社にそういった「問題」や「課題」があるときそれを見逃す可能性が低い、ということになります。これが第一の効果です。
そして、いち早くそういったものを発見し、解決のための手をタイムリーに打つことができるという第二の効果もあるのです。問題を発見し「手を打つ」ことで、より大きな問題に発展することが回避できます。
この発見し、手を打つという行為の真ん中にあるのが「情報発信」といえるでしょう。問題を発見した段階でそれを吟味、考えながら「情報発信」する。そうすれば、この段階で、その問題はかなり経営者の頭の中で整理され、解決の方向への筋道がついているはずです。
もちろん、「情報発信」のすべてがこういう効果を発揮するとは限りません。
しかし、「問題」や「課題」が放置されたまま、そのマイナス面が肥大していくということに対して、少なくとも一定の抑制効果はあるはずです。
ひと昔前であれば、自社の「問題」や「課題」をわざわざ外に向かって発信するなど、あり得ない考え方だったのだろうと思います。
ところが、今は、そこに取り組む姿勢そのものが発信材料となるのです。
そういう意味では、世の中、ずいぶん変わってきたと言わざるを得ません。
ここまで述べてきましたように、「問題」や「課題」そのものを「情報発信」する、ということも面白い試みといえるのですが、さらに考えられるのは、その解決へのプロセスも「情報発信」の材料になるということです。
「問題」や「課題」にどんな風に向き合い、どう考え、具体的にどんな解決策を打ったのか、というプロセスは興味深い読み物となります。
企業内に起きるこういったこと全般が「情報発信」の材料となるので、常に「問題意識」を持って経営にあたっていれば、冒頭に申し上げた「ネタ」に困る、という現象は起きないのです。
つまり、企業活動に向き合うことと、「情報発信」は本質的にはイコールなのです。
通常はここが分離されたもの、と解釈されているために、別にわざわざ「ネタ」を探さなければ、となるわけです。
経営者の「情報発信」は、自社の「問題」や「課題」が発信のテーマになり、その解決へのプロセスもまた発信のテーマになる、ということを頭に入れて常に取り組んでみてください。
そうすれば、なにかないか、と「ネタ」を探し回るよりも、自然に書くことはいくらでも湧いてくる、という状況になるはずです。まあ、ここまですべてが理想通りにすんなりいく、とは思いませんが、通常の企業活動と「情報発信」を分離させない、という今回の考え方、ぜひ取り入れてみてください。
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