全体の中の位置づけを明らかにして、新しい展開を見据える
一括発注するか。個別に発注するか。クライアントさんとの打合せの際に、議題に上ったことの一つです。
協力会社に一括発注して仕事を依頼すれば、会社としては楽ですが、得られる利益は小さくなります。一方で、関係各社に個別に発注すると、利益率としては高くなる反面、個別に発注した仕事を会社で取りまとめる手間が出てきます。
いわゆる粗利ベースで比較すると、「一括発注して業務委託<個別発注して業務委託」となるので、会社としては、できるだけ個別発注する仕事を増やしたいという意向がありました。
けれども、その案件に関わる社員の負担で見ると、「一括発注して業務委託<個別に発注して業務委託」となり、業務の取りまとめに従事する社員の人件費負担を勘案すると、一概に個別発注が会社にとって有利とは言えません。
このため、管理会計的には、「一括発注する時の粗利-その業務に関わる社員の人件費」と「個別発注する時の粗利-その業務に関わる社員の人件費」を比較して、決めるのが正しいやり方になります。
協力会社に業務委託する際に得られる粗利は比較的簡単に計算できます。けれども、その業務に関わる社員の人件費を計算するには、「給与の時給換算額×その業務に関わった時間」を個別に算出する必要があります。
そして、関わる人も毎回変わるし、たとえ同じ人でも給与が変わったりします。また、業務に関わる時間も、正確に測定しようとすると、記録を取らなければならないし、業務に慣れてくれば、時間も短くなる状況が生れます。
つまり、正確な数字の比較を行うためには、細かい計算と面倒な手間がかかりますが、出てきた数字がどこまで実態と比べて正しいのかと言えば、疑問符がつくのです。
一方で、一括発注して業務委託したものに、単純に利ざやを載せて納めるのと、個別発注して業務委託したものを自社で取りまとめた上で納めるのとでは、自社に貯まるノウハウに大きな違いがあります。
前者はどちらと言えば、ブローカー的な動きになるため、社員がより自覚を持って仕事に取り組まないと、単に右から来た仕事を左に流して終わりになりかねません。しかし、後者は手間がかかる分、自社が中心となって動くため、将来の利益につながる簿外資産を築くことも可能になります。
したがって、まずは、会社として大きな方向性を決めることが先決です。そして、あまり複雑にならない基準で比較して、最適なやり方や組合せを地道に探っていくことが肝要です。
数字を使って比較検討することは大事ですが、使い方によっては、数字に振り回されます。
数字はあくまで一つの指標。点で捉えるのではなく、全体の中における位置づけを明らかにして、新しい展開を見据えましょう。
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