早すぎるくらいが丁度良い同族社長の〇〇対策
年末の時期は社長なら誰しも、自ずと自社の一年を振り返りつつ、将来の戦略を考えたり、あるいは「緊急ではないけれど、重要なこと」について思いを巡らせたりする大変貴重なタイミングです。
会社の場合は事業が永続する限り何年でも永続していきますが、人間の体には寿命があります。どんなに元気で仕事が大好きであっても、いずれ必ずバトンタッチをする時期がやってくるのが現実です。
上場会社の社長交代のようにアッサリ交代できたらいいのですが、同族会社の場合はそうはいきません。同族会社の場合は「経営」のバトンタッチだけでなく「財産」の承継も不可欠だからです。個人と法人が複雑に絡み合っていますから「財産」の承継に関しては、少し専門的な知識も必要となってくるのも事実です。
難しい話、ややこしい話は誰しも避けて通りたいものです。自分自身の「死後の世界」を連想させる相続の話についてはできる限り考えたくない、まだまだ自分は現役だ…そう考えたい気持ちもわからないこともありません。ですが、それを放置しておくとどうなることか…ということです。
皮肉なもので、先送りをすればするほど、ますます「争族」の火種が粛々と大きくなっていきます。特に、同族会社のオーナー一族の中でも「兄弟(姉妹)仲があまり良くない」「想定相続人の中に血縁関係のない人がいる」「想定相続人の中にちょっと困った人?がいる」場合には、正しい手順に沿ってしかるべき打ち手を打っておかないと、後々取り返しのつかない事態を引き起こす可能性があることを、社長は知っておかなければなりません。
一度でも相続問題でモメてしまうと、ほぼ、人間関係の修復は不可能と言っても過言ではありません。金額の多寡に関係なく金銭トラブルは生じますし、何よりツライのが、無駄な精神的なストレスで、お金がらみのトラブルや心配ごとは、知らず知らずのうちに心身をむしばんでいきます。
だからこそ、安定的な事業継続のためにも、家庭内の平和のためにも、相続対策は早すぎるぐらいで丁度良いのです。そもそも同族会社のオーナー一族の場合は、他の一般的な家庭に比べて「争族」のリスクが高いのですが、その理由は、同族会社のオーナー一族の財産構成に起因しています。
過去からの内部留保がある自社株式は高額になりがちですし、事業用に使っている不動産なども存在します。事業に直接関連しない資産、例えば現金や普通預金、株式や投資信託などであれば、後継社長以外の想定相続人に承継することも可能ですが、事業に直接関連するような「不動産」や「自社株式」は、後継社長が承継せざるを得ません。
その一方、「不動産」や「自社株式」は市場で売るわけにもいかず、純粋に後継社長が経営の舵取りを円滑に行うために保有するだけなのにも関わらず、相続税評価額が高くなってしまう傾向にあるのです。後継社長は、換金することのできない資産を承継し、オマケに多額の相続税負担に悩まされ、場合によっては、銀行から相続税納税資金を支払うために借金を抱えるケースも珍しくありません。
一方、後継社長以外の想定相続人は、事業に関連しない相続財産を承継することになるのですが、往々にして「後継社長だからってたくさん財産を相続して不公平だ」とか「お父さんは、昔からお兄ちゃんだけえこひいきしている」などなど、後継社長にはあずかり知らぬ事態が引き起こされてしまうのです。あなたの会社はどうでしょうか。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。もっといえば、会社の未来を創ることです。
ダイヤモンド財務®コンサルタント
舘野 愛
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