第126号:売上優先の思考が経営を複雑化して様々な問題を引き起こす。
毎日、忙しく働いているのにもかかわらず、経営はギリギリの状態で、思うように利益が残らず苦しむ企業が増えています。今まで数多くの経営相談を受けている中で、そうした利益が出ないと悩み、相談に訪れる企業を分析してみたところ、共通した問題点が見えてきました。それは経営の複雑化です。
利益が出ない経営の共通点、それは経営の複雑化
自社の「ビジョン」や「ミッション」を描くことが苦手な経営者は、目先の売上を上げるための活動が優先事項になり、売上を上げるために経営判断がブレ、幅広いお客様を対象にビジネスを展開してしまいます。そうすると、対象となる顧客が広がることに伴い、豊富な商品も取り揃えなければならなくなります。そうしてビジネスが複雑化していくのです。
経営者がビジョン、ミッションを描けていないことが、ビジネスを複雑化してしまうのです。また、一度広げてしまうと、絞り込むことは一段と難しくなっていきます。
市場が成熟し価格競争も激しくなっている現代において、売上を追求する活動が会社の利益を出しにくくしてしまうのです。
売上を上げることばかりに意識が奪われて、より経営が複雑化する
ある住宅販売会社のお話ですが、この会社は営業マン一人ひとりに目標数字がありました。競合との価格競争がますます厳しくなるにつれ、次第に目標達成できない営業マンが増え、会社の業績が伸び悩むようになりました。
そこで営業マンは安易に値下げに走り、競合他社と価格で競い合って契約を獲得する人が出てきました。また、他の営業マンからは低価格な新商品を開発することに対する要望が上がり始めました。会社側としても改善策が打出せず、しぶしぶ容認している状況でした。
利益率が低下している現状を、客数を増やして売上を上げることでカバーしようと、安易に行動してしまったのです。その結果、施工部隊は多忙になり、スタッフは次第に疲弊していきました。単純ミスも増え、顧客からのクレームも多くなっていきました。
経営者は、やむを得ず、利益も出ていないのにスタッフを増員し、そのための設備投資も迫られ、さらに固定費のかかる経営体質になっていきました。
決算を迎えて一年を締めてみると、売上は多少上がったものの、利益は前年よりも落ちてしまったのです。
売上を上げることばかりに意識が奪われて、それに伴って上昇する固定費に対する意識が薄くなっているのです。
経営の複雑化は、目先の売上と引き換えに様々な問題を起こす原因をつくってしまうのです。
画像引用:photo AC
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