第125号:「選択」と「集中」へのためらいが自分と社員の時間を奪う
朝礼や会議等を行う時間がないほど目の前の業務に追われ、仕事をこなしていくのが精一杯という企業が、ますます多く見受けられるようになっています。働き方改革が叫ばれる中で、社員の労働環境を改善しなければならないと思う一方で、現場の仕事はオーバーフロー状態になっており、改善の糸口が見つけられずにいるのが現実です。
先細りしている企業の特徴は、顧客の新のニーズを把握していないこと!
多くの会社を見てきた中で、業績の良い会社ほど時間に余裕を持ち、未来に向かって「選択」と「集中」を行い、業務改善を繰り返して社員満足と顧客満足度を高めています。「選択」と「集中」をしながら業務を改善する習慣のある会社は、スタッフ全員が会社の目的と目標達成のために「やるべきこと」「やらざるべきこと」を考える習慣が定着しています。
一方で先細りしている企業は、スタッフが抱えている仕事が多く、自分の仕事を消化していくことで精一杯になっています。そうするとスタッフ全員が自分の仕事を効率よく進めることに関心を持ち、仕事の重要性や必要性も考えることができず、仕事の優先順位も理解しないまま、ひたすら仕事をこなすだけになっていきます。スタッフの仕事が増え業務が多忙になればなるほど、顧客満足の立場で物事を考えることができなくなっていくのです。
ある広告会社さんの事例があります。
この広告会社さん、始めは売上優先の考えで、幅広く商品を取り扱っていましたが、次第に印刷物全般からwebや動画まで取り扱っていきました。商品ラインナップの広さから、スタッフの作業効率がとても悪く、残業の続く毎日でした。それによって顧客のニーズに鈍感になっていき、お客様の要望に応えることだけに精一杯で、顧客に振り回されていました。顧客の要望は低単価や納期のスピードだと思い込み、顧客の要望に応えようと思えば思うほど、仕事が大変になっていきました。
しかし、この要望は顧客の真のニーズではありません。そこで経営者は現場作業の時間管理をして、仕事の内容ごとに標準的な作業時間を設定し無駄な作業をなくそうと取り組みました。ところが結果は、さらに顧客ニーズに鈍感になり、修正作業は増え、ますます作業効率が悪くなっていったのです。顧客の表面的な要望に応えることに終始することになり、利益は下がり、業務は多忙になっていったのです。
顧客満足の向上が生産性と売り上げのアップにつながる
そんな状況の会社が「選択」と「集中」することに取りくみ、一つの商品に特化することを決めました。一つの商品に特化することで、その商品を通じてお客様が求める真の価値が何であるかを深く考える時間ができました。それにより、ただ単にお客様の要望を聞いて「低コスト」「低単価」で印刷物を制作するのではなく、お客様の現状の強みや競合他社の分析を行い、お客様の「目的」と「目標」を達成するために、コンサルティング型の提案をすることができるようになりました。販売価格も大きくアップすることに成功し、さらに顧客満足度も向上させることに成功したのです。
商品を絞りこみ、シンプルにすることで顧客価値を高める時間が生まれました。それが付加価値を生むサービスの向上につながり、価格競争から脱却することができたのです。
画像引用:photo AC
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