抜擢できる“眼”、原石を見逃さない“眼”をもつこと
先日、6年前からお付き合いのあるクライアント様が、本を送ってくださいました。著者本を送ってくださる方は多いですが、ご自身が主人公となったビジネス本というのは初めて。大ヒット商品の開発者として著名になった現在、その姿は本当に眩しく感じられます。
この仕事をしていると、過去に仕事をした方が新聞や雑誌、メディアに出ているのを目にする機会も多くあります。みなさん、紆余曲折を経ながらも、結果や成果を出しているからこそ、メディアで採り上げられているわけです。ですが、こうした方がみんな若手のときから目立っていたり、ずば抜けた評価を得ていた方ばかりでないことに気付かされます。
仕事の優れた能力に加え、アピール上手、世渡り上手、コミュニケーション上手の人が「選ばれる人」と思われがちですが、そのあたりは決してうまいとはいえない人も多くいます。そんな人をしっかり抜擢した側に対して、「よく見つけ出せましたね」「選び出せましたね」という、その智慮の深さに感心することもあります。
現在の活躍ぶりを見て、「やると思った」「できると思っていた」というのは後付けで誰でも言えること。ともすれば、その時にはうずもれがちだった人に着目して、選ぶべき人を選べる「眼」をもっているトップ、または上司にこそ、並々ならない先見性を感じます。前述したクライアント様、決して前へ前という人ではありませんでしたが、ちゃんと選んでもらっています。
他に多くの候補者がいるなかで、表面的なことだけでなく、根底にあるものを見極めて、選ぶべき人を選べる「眼」があるかどうか。人の上に立つ立場であれば重要な資質であり、それが正解か、不正解かが業績にも影響してきます。
こんな話をすると、パッと思い浮かぶ経営者の方がいます。30代のとき、ご本人曰く思いもよらず突然、後継者指名をされたという方です。10年近く経った今では、地方や業界を超えた経営手腕で知られるようになりましたが、指名された当時は、「なぜ、この人?」「大丈夫?」という疑問の声や反対の声が多かったと言います。そんな周りの声に一切惑わされず、そのときはワンマンに見えた元社長も、今では「本当に見る目があった」と人選への評価が高まったといいます。
前述した本を送ってくださった方、この後継者指名されたお二人ですが、共通点としては、「聞く耳をもっている」「自分を客観視できる」「人とつながる意識が強い」という3点が挙げられます。
この3つの共通点のなかで、敢えて「人とつながる意識が強い」は、とくに重要視すべき点かもしれません。カリスマ性やリーダーシップは、リーダーとして必要ではありますが、これだけが突出しているだけでは、やはり無理が出てきます。組織の先頭を走る力は必要不可欠ですが、自分の後ろに続いている人を、追いつき並んで走れるようにする、リーダーの伴走者にするべく、育てる意識があることが重要です。
永続的な企業活動を目指すのであれば、バトンを渡す「次」への配慮が必要になります。それが次の世代であれ、個人であれ、「繋がる」「繋げる」「育てる」意識があるかないかが大きな分かれ目。その意識の有無は、選ばれるべき人、選ぶべき人であるかどうかの大きな判断材料ともいえます。
ダイヤの原石を見逃さない“眼”を磨くこと。
選ぶべき人を選べる「眼」をもつ、それもトップとしての必須条件の一つといえそうです。
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