第122号:会社のリスクは経営者の不安感から生まれる
先行きが不透明な日本のビジネス環境の中で、社員と危機感を共有することが大切と考える経営者は少なくありません。しかし、経営者の不安感から生まれる、間違った危機感が経営を複雑化し、スタッフを疲弊させてしまう原因をつくり出してしまうことがよくあります。
不安な感情が強い人は、悪いところばかり目がいってしまう!
人は、冷静に頭で考えて行動しているようで、実は自分の不安な感情に振り回されています。
不安な感情が強い人は、満足しているお客様よりもクレームをいうお客様が気になり、クレームをなくすことに懸命になります。
売上の良い日をさらに伸ばすことよりも売上の悪い日が気になり、売上の悪い日を改善することに意識を傾けます。
売上の良い店舗よりも売上の悪い店舗が気になり、売上の悪い店舗を改善することに躍起になります。
不安から発した行動は更なる不安を招く!
これは、5店舗を経営する飲食店の話です。
年々、売上が減少していることに不安を感じ、鶏肉の専門店でありながら、常連客の要望に応えて牛肉や魚のメニューも導入し、気づけばメニューがずいぶん増えていました。メニューが増えたことで、仕込みや食材管理も大変になり、さらにオペレーションも複雑になっていました。現場スタッフは次第に疲弊し始め、それにつれて商品の品質もばらつきが目立つようになり、一度は上がりかけた売上もまた下がり始めてしまったのです。
そこで経営者は、セントラルキッチンをつくることで現場負担の軽減と商品の品質の安定を図ることにしました。ところが今度はセントラルキッチンの設置に計画以上の固定費がかかって採算が合わなくなり、やむなくセントラルキッチンの採算を合わせるために、お弁当事業を始めました。
しかし、このお弁当事業は店舗運営とは違ってノウハウがないため、なかなか軌道に乗らず、経営者はお弁当事業に時間を奪われていきました。気がつけば、既存の店舗の管理にも目が行き届かなくなり、業績低下に拍車をかけることになりました。
結果、経営者は不採算店舗のテコ入れに振り回され、すべてのビジネスが中途半端になり、常に目先の売上を追いかけながら、前にも増して不安な日々を過ごすことになってしまったのです。
負のスパイラルから抜け出すには商品を極めること
市場が縮小している現代では、一番商品を極めることで顧客の信頼を獲得し続けることが最大のリスクヘッジになります。リスクを分散するということは、商品の品質の低下につながり、さらなるリスクを生み出しかねません。
自分の不安を解決するための行動がさらなるリスクを生み出し、さらなる不安を生み出すことになりかねないのです。
画像引用:photo AC
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