一番下のボタンから、確実に見える社長・上司・社員の関係
スーツを着たとき、「アン・ボタンルール」を知っていますか?
アン・ボタン(un bottom)とは、ボタンをしないということ「スーツの上着の一番下のボタンは留めないというルール」のことを言います。「アン・ボタンマナー」という言い方もあるようですが、私は「ルール=決まり」だと考えています。
知っている人にとっては「当たり前」「常識」と言えることですが、このルールがあること自体を知らない人というのも確実にいます。新入社員研修で名刺交換と一緒に教えるべきことですが、多くの人が「当たり前」という反応をしますが、その一方で、「まったく初めて聞いた」という反応の人も少なくありません。
まだ、ピンとこない人がいるかもしれませんので、少し詳しく説明してみます。
社長の写真を撮影するとき、一般的な企業ではスーツを着用して撮影するでしょう。そのとき、スーツの上着のボタンが2つであれ、3つであれ、一番下のボタンは留めてはいけない、ボタンを全部留めていてはいけない、という服装ルールがあります。スーツを着るときのマナーの一つともいえます。
ボタンを開けたままでは、だらしがない、下まで全部留めるほうがきちんとしている、というのは大きなカン違い。とにかく、スーツの上着の一番下のボタンは留めてはいけない。どちらでもいいのではなく、留めてはいけない、これが「アン・ボタンルール」です。
実際に、セミナーでこの話をすると、ほぼ全員の人が「知っている」という反応をします。参加者はとくにおしゃれやファッションに詳しい人ではなく、一般的なマネジメント系の内容のセミナーです。ですので、一般的に浸透しているものだと思っていると、実際はそれが違っているのです。
一番、印象深い例としてよく挙げているのが、数年前のビジネス雑誌の話。社長が受付前でにこやかな表情でおさまっているほぼ全身写真。その社長のスーツの前ボタンは・・・・・下まで全て留まっていました。
また、ある企業の「アニュアルレポート」には、やはり、ボタンが全部きっちり留まっている社長の姿。ある学校説明会では、保護者を前に説明をしている先生のスーツのボタンが全部留まっていたり・・・と、実際に目にする機会が少なくありません。
最近の例でいうと、眞子様のお相手として初めて囲み取材を受けたときの小室氏の前ボタンも、下まで留まっていました。また、コンサートを突然キャンセルして謝罪会見をしたジュリーこと沢田研二氏も、淡いピンクの光沢感のある三つボタンのスーツのボタンが全て留まっていました。ステージ衣装だから違う、とは言えないはずです。
なぜ、人前に出る場、それも突っ込みも多くされるであろうときに、周りの人は何も言わなかったのか? ルールを実践していると思われる法律事務所の方一人でも、言える雰囲気ではなかったのでしょうか?―――と思ってしまいます。
ボタン一つのことですが、ここから見えてくることも多くあります。
まず、社長が全部留めて媒体に出てしまっている企業。これは社長が常識ない、と切り捨てるばかりでなく、そんな社長に誰一人、助言できない(=言えない)ことが問題です。ワンマン、聞く耳をもたない、ということが笑顔でいても出てしまっているのでは?と想像してしまいます。
また、社員のなかには外見や服装にあまり興味のない人や苦手意識のある人もいて、そんな人はこのルールを知らないことも考えられます。社会人経験の少ない若手であれば、不思議ではありません。では、その上司はどうして、このルールを教えてあげないのか?と考えてしまいます。上司も全部留めてしまっているのであれば、あきらめもつきますが、自分はしっかり「アン・ボタンルール」に沿っているにも関わらず、部下がわかっていないのにそのまま注意もせず・・・・・・これも問題です。自己中心的なのか、人のことはあまり気にしていないのか、部下を見て上司を想像してしまいます。
ある程度の年齢とポジションになれば、自分でできているのは当たり前、と言っていいはずです。さらに見なければいけないのは、自分の下の人たちへのルール実行への配慮ができているかが大切だといえます。
新入社員がボタンを全部留めたまま、営業先へ行ったら、わかる相手ならば思うはず。
「この会社、誰も言わないんだなーー」と。
たったボタン一つのこと、服装の決まりごとですが、人や組織の様子が垣間見れる材料でもあります。人の上に立つ立場であれば、やらなければいけないことの一つは、スーツのときは、男性社員の上着のボタンが全部留まっていないか、そのチェックといえそうです。
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