社長がセールスよりもマーケティングよりも目を向けるべきこと
「製造業だからってただモノをつくっていてもダメなんですね!」— 当社のコンサルティングの中で、目下集客からセールスまでの流れをつくっていかれているクライアント企業の社長のお言葉です。
これまでは下請け的な仕事が多く、顧客からの要望に応えることを必死にやってこられてきましたが、これからは自らの企画を練り、自分たちでそれを発信してセールスまでもっていくという、提案型ビジネスへの転換に向けて頑張っておられます。
特に製造業の経営者には「うちはものづくりの会社だ」という意識が強い方も多いですが、単に自社の「能力」や「キャパ」を売り物にするのでは、自社のポジションは下請け的なものとなり、「企画」を握っている顧客が力をもつ構図となります。
こうなると、常に相手(顧客)の要望に振り回され、しんどいし忙しい割に儲からないということになってしまいます。
これは製造業であろうとサービス業であろうと同じことですが、儲かる事業をやるためには、自社の「能力」を生かしながら、それを自社ならではの「企画」や「提案」に変えることが必須です。
そして、自社の「企画」をもったならば、当然ながらそれを売っていくためのセールスやマーケティングなどの販売力が必要になります。
現に、世の中にはセールスやマーケティングのやり方を指導するコンサルティングや研修、講座などであふれていることも、多くの経営者がこの「売る」ということに課題意識を持たれている現れでしょう。
では、そういったセールスやマーケティングの手法を磨いていけば企業としての力がつくのでしょうか?
その答えは「否」です。
古典的な手法であろうが、いま流行りの新たな手法であろうが、そういった「やり方」レベルのものは出尽くした感があり、かつそういった手法がいまや誰でも簡単にアクセスできる時代ですから、セールスやマーケティング自体で差別化をしようとしても難しくなってきています。
ではこれからは何に目をむけばいいのか。
やり方(方法論)が飽和してきているのですから、もはや何か具体的な(定型的な)方法を知って実践してもうまくいく余地はない。
だとすると、これからは「経営センス」が勝負の分かれ目になります。
センス?それって生まれつきのもんだろ?と思われるかもしれませんが、経営センスとは単に感覚的なものではなく、その時々の経営上の判断において、自分なりの思考と感覚を使って独自性のある決断をする能力を指します。
つまりセンスを生かす経営とは、論理的に正しいという判断軸だけでなく、経営者としての美意識や矜持といった感覚的なものによる判断をも積極的に生かしていくということです。
セオリー通りでもなく、当てずっぽうの直感だけでもなく、しっかりロジックを組んで考える中で、自分なりの美学やひらめきをも織り交ぜていく。
いうなれば「思考と感情」、「論理と情動」といった相反するものをうまく交差させるアプローチをとるということです。
当社のセミナーやコンサルティングにて、経営のセオリー(ロジック)に加えて現代哲学の考え方をお伝えしているのも、世俗的な考え方やセオリーを超えた抽象度の高い世界観(世界の見方)をもつことで経営センスが磨かれ、自身の在り方から日々の意思決定に至るまで、人とは違う選択ができるようになることを狙ってのことです。
社長が自身の経営センスを磨き、それをフル動員させて日々の意思決定をしていく。それを続けていけば、自社のブランディングが際立っていくはずです。
ここでいうブランディングとは、ロゴや広告上の見せ方といったマーケティング施策の一環としての意味ではありません。他社とは違う自社の独自性を打ち出していくということです。
つまり、社外に向けた自社の見せ方だけではなく、すべての経営上の意思決定において、社長のこだわりや美意識を織り込んでいくということになります。
「迷ったら美しい方を選べ」という言葉もあります。
自分たちがやっていることを「美学」にまで昇華させることができれば、それは強い経営となることは間違いないでしょう。
多くの企業がすでに実践している、手垢のついた「やり方」をいくら学んで実践しても、自社の独自性は発揮されず、ブランディングは際立っていきません。
常にお伝えしていることですが、経営の本質は「差別化」にあります。そして、「同じことを同業他社よりきちんとやる」という戦い方では残っていけない時代です。
社長の経営センスをフル動員し、論理と感性を生かした経営で、自社ならではの「ウチらしさ」を際立たせていきましょう。
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