ビジネスにおけるいい失敗と悪い失敗
「成功するためには失敗することが大切だ。」とよく言われます。失敗を恐れて行動できない人の背中を押すようなメッセージですが、確かにビジネスにおいては行動を起こし続けなければ結果は出ませんし、行動している以上は当然ながら失敗することもありますから、成功するためには失敗は不可欠と言えます。
しかしながら、大事なことは「どれだけ失敗をしているか」ではなく、「どんな失敗の仕方をしているか」です。
例えば、うまくいったときの結果だけを想像し、それに惹かれて大きな事業投資をやってしまう経営者にこれまで何人もお会いしてきました。こういう人は行動力はあるものの、考えることは苦手なため、失敗してもただ落ち込んだり痛みを感じたりするだけで、そこから学ばない、つまり次に生かせない人が多いです。
「この失敗は痛い!」と言いながら、どこか失敗した自分に酔っていたり、「今回は運が悪かった」「うまく騙された」などと失敗を他人のせいにしたり、あるいはスピリチュアルに逃げて「どんな失敗にも意味がある」と都合のいい解釈をしたりすることも...。
ここで、失敗を生かすために大切なことは「失敗にも意味がある」と自己都合のルサンチマン(弱者の逆恨み)を発動するのではなく、「意味のある失敗をする」ということです。
「意味のある失敗」というのは言い方を変えると「次につながる失敗」ということですが、そのように失敗を生かすために必要な考え方が2つあります。
ひとつは、「絶対に失敗しない」という意気込みで、成功するための戦略と戦術を事前に徹底的に考えることです。
イチかバチか的な自己都合のシナリオで突っ切るのではなく、様々な場合を想定し、失敗しないための算段を事前に考え抜くのです。
このように事前にロジックを積み上げておくと、成功する確率が上がることはもちろん、失敗したときに「何が悪かったか」を理解することができます。
自分たちの市場(顧客)の捉え方がズレていたのか、、、
競合の動きを読み間違えたのか、、、
自社のオペレーションがまずかったのか、、、
それとも本当に運が悪かったのか、、、。
これが、事前のロジックの積み上げがバクッとしていると、失敗の原因の理解も同様に大雑把となってしまい、次に生かせずまた同じ失敗をしてしまうということになってしまいます。
『思考→行動→失敗→理解』
このサイクルを早回しすることで、他社を凌駕する成功を積み重ねることができるというわけです。
そして、2つ目の考え方は、上記とは矛盾するようですが、最初から「失敗は当然起こる」と考え、その失敗を起点とする新たな成功ストーリーを事前に考えておくということです。
例えば、他社からビジネスと人材を買い取るようなケースで、そのビジネスがこけたとしてもその人材を使った別のビジネスを事前に考えおくとか。
あるいは広告で集客した見込み客にある商品を売り切れなかった場合に、次の機会に別の商品を売る導線を事前に仕込んでおくとか。
はたまた他社とジョイントで何かをやった場合に、そのビジネス自体は失敗しても信用を売る仕掛けを入れ込んでおいて次につなげるといった具合です。
このように最初の失敗で終わらないよう複数のシナリオをつなげておくことで、精神的にも非常に楽になり、心おきなく、かつ冷静に最初の勝負に挑むことができます。
「必ず成功させる」という考えと「失敗は当然起こる」という考え、この一見相反する考え方を共に持ち合わせ、それぞれ事前にしっかり準備することが、失敗から学び、そして活かすために必要で、このどちらかだけでは駄目ということです。
もちろん、失敗を恐れて行動できないというのは論外です。人は安定を求める生き物ですから、社員レベルでは「いまうまくいってるんだからこのままでいい」という考えとなっても仕方ないかもしれませんが、経営者は違います。常に会社を次のステージに上げていく手を打っていかなければなりません。
そして、チャレンジに失敗はつきものです。冒頭の言葉のように、成功者になるほど失敗を繰り返し、そして失敗から学んでいます。しかし、それを「意味のある失敗」にしなければ単に会社がダメージを受けるだけで終わってしまいます。
そのためにはやはり経営者が戦略的思考をもつことです。考える痛みを避けて、行き当たりばったりで行動しても、結果的には「意味のない失敗」に終わりより大きな痛みを受けることになってしまいます。
思考と行動はセットです。ロジックを積み上げ、失敗を意味のあるものにし、そして成功をつかんでいきましょう。
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