属人化はすべて悪なのか
店舗ビジネスでは、お客様に対して商品(モノ、サービス)を提供する方法(いわゆる業態)として、大きく「コンサルティング型」と「セルフ型」に分けられます。
コンサルティング型では、通常は販売員やサービス担当者などの人が介在し、お客様と対話しながらお客様の問題を解決していくサービス提供方法です。当然ながらお客様は抱えている問題自体を把握できていない場合も多くあり、その発見、解決がコンサルティング型の強みでもあり存在意義でもあります。代表的な業態として百貨店や美容業、治療院などが挙げられます。
一方のセルフ型では、お客様が自らのニーズをもとに自らが購入までの意思決定をおこない、商品を購入するまでに基本的には人が介さない提供方法となります。スーパー、コンビニ、量販型アパレル、食券型飲食店…といった業態が代表的ですね。
当然どちらかだけではなく、ミックスした形も存在します。ネット販売は基本的にセルフ型ですが、他の購入者のレビューがコンサルティングとして機能し、問題を解決することも多々あります(信憑性の問題はありますが)。購入者同士のやり取りができるプラットフォームもあり、最近ではアパレルなどで接客を取り入れるサイトもあります。
また飲食店ではセルフ型が多いのですが、会員制や高級料亭、フレンチなど、お客様の好みや要望、シチュエーションを踏まえたうえでのサービスを提供することから、コンサルティング型を併せ持つといえます。
コンサルティング型とセルフ型のどちらがいいというわけではなく、お客様に合わせた業態を考えていく必要があります。ただし、ヒトモノカネ情報といった経営資源に限りがある中小零細企業などでは、コンサルティング型を志向したほうがビジネスとして上手くいく可能性は高くなります。大手や競合他店に負けない独自性を出していくには、人の力が一番強力です。
人対人、ワントゥワンの関係性で深く、濃い関係性を作り、そのお客様にとって唯無二の店舗、人となることが中小零細企業の生き残れる道です。
セルフ型は基本的に大量の商品、多店舗、低価格、最寄品(日用品)をベースとし、自動化や機械化(さらにはAIを使い)でいかに省人化を進めていくか、を追求します。であれば小さな店舗は人の力を使い、独自性を出していくべきです。同じ土俵で戦ってもまず勝てません。
とはいえ、人の力を使っていくことは、いわゆる悪い属人化にもつながります。その人がいなくなれば、その店は売上がガタ落ちするパターンが多いのも事実です。こういう店に共通するのは、店舗運営を「任せて」いるのではなく、「丸投げ」しているだけだということです。
勘違いしている経営者が多いのですが、店舗運営を「任せる」ことと「丸投げ」することは全くの別物です。「任せる」というのは、権限と責任を明確に決め、業務を一任することです。丸投げは何も考えず、権限や責任はおろか、すべてを放り投げることです。
丸投げされた結果、そのスタッフは自分には何がやれて何がやれないのかがわからず、さらに基準が作られていないため、経営者からは思い付きで細かい指示が飛んだり、いきなり店舗の存続を左右するような大きな意思決定をさせられたりして疲弊していきます。たまたま仕事のできるスタッフであれば、すべてを丸投げし、その間は順調に業績を伸ばしますが、そのスタッフがやめた途端に問題が噴出します。その人しかできないことばかりになっているのです。
これが悪い属人化です。中小零細企業の店舗経営者は人の力を最大限に発揮させ、そこで独自性を出していくべきですが、上記のような丸投げは宝くじに当たるほどの確立でしかうまくいかず、しかもそれは長続きしません。さらにその後に何も残らないのです。
店舗経営者に限らず、経営者は「任せる」土台を作る必要があります。そこには権限と責任が明確に言語化されたマニュアルがかかせません。マニュアルは人の力を制限するものではなく、人の力を最大限発揮させるための土台となるのです。
特にコンサルティング型を志向する店舗にとって、その土台は重要です。土台があって初めて意味のある、再現性の高い、顧客満足度を引き上げるサービスが可能となります。
経営者の皆さん、スタッフが飛躍できるマニュアルをつくっていますか?
マニュアルは人を縛りつけるものだと勘違いしていませんか?
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