親子経営 「フェアな経営」を目指して
先日の私の塾生とのセッションでの話です。彼の会社は建設機械の販売会社です。彼は長男で後継者になります。彼の父親が事業継承で悩んでいるとのことで私とのお付き合いが始まりました。
父親の相談にのる傍らで後継者の育成を引き受けましょうということで長男が私の経営塾の塾生になりました。もうかれこれ2年が過ぎ3年を迎えています。彼とのセッションは1か月に一回のペースで私の事務所で行っています。
彼は生真面目で誠実を絵に描いたような青年です。会社では経理、総務などを担当しています。職務もあり今回の働き方法案の成立について私と話したかったようです。彼は以前から自社の業務改善、業務改革について関心があり、実際に善かれと思われる改善、改革を実行してきたようです。
「先生、先々月から7時40分から行っていた朝礼を始業開始後の8時から行うことにしました。」
「それはよかった。いいことをしましたね」
「社員から不平、不満があったわけではないのですが、始業時間が8時からなのに7時40分から朝礼を行うと少なくとも7時30分には出社していなければなりませんでした。時間外であるということが私にはずっと気にかかっていましたが、それを私が親父に言うといつも決まって喧嘩になっていました」
「今回、お父さんは納得されましたか」
「親父は最後まで文句を言っていましたが、今回は私が何度も粘り強く話ました。ちょうど政府が働き方改革法案を通したこともあり、いずれ見直さなければならないのだと説明をしました」
「そうでしたか、貴方のお父さんだけでなく私の亡くなった親父もそうでしたが、多くの企業の経営者は社員の働く時間については随分とルーズな捉え方をしています。こちらは月給を払っているのだからそれくらいはしてもらってもいいだろうといった身勝手な使用者的意識と言えるでしょうね」
「さらに言えば、朝礼があるなしにかかわらず朝の出勤時間を異常に気にする経営者がときたま見受けられます。私の知るある会社では社長の出社がとても早いのです。朝の5時には出社しています。たまらないのは社員たちです。なかでも幹部社員たちのなかには仕方なく6時に出社していたといいます。それを見かねた長男が親父を説得してなんとか6時にさせたと言っていました。今は7時に幹部社員の多くが出社していると言っていました。その社の始業時は8時です。その社長の言い分は、なにも私が早く出てこいと言ったことは一度もない、社員が勝手に早く出てくるようになったのだというものでした。この会社は今後働き方改革を実施していくなかで相当困難な事態になるだろうと思っています」
さて、この度の働き方改革法案が成立したことをうけて今後大手企業のみならず中小企業においても時短、有給休暇取得の推進が図られることになります。経営者にとっては人手不足のなかさらに追い打ちを掛けられる思いかもしれません。
私なりに今回の法案を繰り返しみたところ中小企業にとって工夫をすればなんとか取り入れることが出来ると考えています。法定労働時間と時間外労働時間の上限を遵守することはそう無理がないとみています。
それよりもこの度の働き方改革を上手く利用して企業の業務改善と業務改革に繋げることが大切だと思っています。それも逆手に取るのでなく、順手に取ってまともに社内改革に取り組めばいいと考えています。
働き方改革の本来の目的は、社員の意欲を高め社員の能力を引き出すことにあります。その通りに順手に取って企業の業務改善、改革を進めればいいのだと思います。その際のキーワードが「フェアな経営」です。
私がいう「フェアな経営」とは経営者が社員に対してのみならずすべての顧客や取引先にたいして「フェア」であるということです。社員に適正な労働時間でより多くの成果を出してもらえるよう業務を見直し、すべての顧客に対価に見合う商品やサービスを提供し、すべての取引先と公正な取引を約束することで「フェアな経営」を実現していきます。
経営者には社員に労働時間の多さを求めるのでなく、労働の質を求めて欲しいと思います。限られた時間のなかで社員一人一人のパフォーマンスをどうすれば高められるのかを働き方改革を進めるなかで追究して欲しいと願っています。
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