その完成度へのこだわりが会社を潰す
飲食、小売、サービスなど店舗ビジネスにおいて、新たなモノやサービスの開発は最重要事項であり、その「生みの親」は“顧客ニーズ”、「育ての親」は自身を含めたあらゆる人の“知識、経験の組み合わせ”であることは当コラムでも述べているとおりです。
この「開発」で気を付けるべきことは、完璧を目指さないということです。開発したモノやサービスの完成度は、まずは7割程度で十分であり、100%である必要はありません。そもそも100%の完成度は幻想であり、単なる自己満足に過ぎないのです。その裏には「失敗すると格好悪い」「開発にかけたお金、時間、労力を無駄にしたくない」という意識が強く働いています。
私に言わせれば、新たに開発したモノやサービスの大半は失敗します。にもかかわらず、100%の完成度(幻想)で大々的にリリースしてしまうと、失敗した時の傷は大きく、会社の存続にかかわる事態にもなりかねません。しかも、完成度が100%だと思っているので、どこをどう改善したらいいのか見当もつかず、その失敗が活かされないまま、悲惨な状況でプロジェクトは終了します。
とにかく、早めの失敗が一番の成功の源です。というよりも、それは失敗ではなく、ズレが具現化したものです。そのズレをいち早く把握することで傷は小さく、改善スピードも速まり、他社に先んじて顧客の支持を得ることができるのです。商品開発も含め、商売は小さく始めて大きく育てることが基本であり、テスト販売を繰り返しながら改善点を潰していき、クオリティを上げていくことが王道です。そしてここで注視すべきは、現在そのスピードが格段に上がっているということです。
老若男女誰もがスマホを持つようになり、情報発信、伝播、共有のスピードがこの10年で段違いになっています。これが何を表すかと言えば、「モノ、サービスの超高速陳腐化」です。全てのモノやサービスが高速で広がり陳腐化、すなわちものすごいスピードで「飽きられる」のです。
このスピードに対応するには、高速回転の試行錯誤しかありません。いわゆる「リーンスタートアップ」(初期投資を抑え、最低限の機能を持った製品を作り、少数の顧客で試す。そのうえで継続するか軌道修正するかを決め、試行錯誤を繰り返し成功へと近づけること)とでもいうべき型をIT業界だけではなく、飲食、小売、サービスと言った店舗ビジネスでも持たなければ生き残れない世の中になってきているのです。
成長性や新規性で経済をけん引するスマホアプリ業界は、常に大量の新作がリリースされ、頻繁にアップデートを繰り返し、機能性や安全性を向上させていきます。まずは出してみて、その反応を見ながら改善修正を繰り返し、ブラッシュアップしていくことが当たり前になっています。
このように、店舗ビジネスでもまずはベータ版(ほぼ完成品)としてでも早く市場に投入し、お客様の意見を取り入れながら成長させることが成功の第一歩となります。なぜならば、繰り返しますが、「モノ、サービスの超高速陳腐化」が誰にも避けられない事態として、実際に起こっているからです。昔のままのスピード感では、間違いなく取り残され、退場を迫られることになるでしょう。
店舗経営者の皆さん、完成度にこだわって、開発スピードが落ちていませんか?
その完成度は「自己満足」ではありませんか?
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