業態開発の基本のキ
顧客ニーズをベースに商品、あるいは業態を開発することは、店舗ビジネスにおいて非常に重要なことはすでに何回も述べています。
ただし、顧客ニーズをそのままの状態で使っても間違いなく成功しないでしょう。顧客はその時に欲しいモノやコトを想像して言っているだけの可能性も高く、その瞬間的な欲求はすぐに跡形もなく消えてしまいます。「欲しがっていたから」「あればいいなといっていたから」とそのまま商品化、業態化しても「そんなこと言ったっけ?」と言う顔をされるのがオチです。
顧客(人)は自分が知っている世界でしか想像できません。しかも先述のように欲求は流動的です。したがって顧客にアイデアを聞いたとしても「浅いアイデア」になりがちとなります。同様に、皆が「いいね!」というような新商品、業態のアイデアは実行しても上手くいきません。底が浅く、誰でも想像できるため、新味が足りないのです。あまりにも当たり前だということです。また、誰でも想像できるということは競合が既にやっている可能性もあります(おそらく失敗しますが)。
だからこそ、ヒットするアイデアを出すには、顧客ニーズだけではなく、その「組み合わせの仕方」がポイントになります。世界中の誰一人、世の中にない全く新しいモノは生み出すことができません。世の発明の全ては、自分と他人が積み重ねた知識や経験の組み合わせでしかないのです。そもそも世の中にない全く新しいモノは誰にも受け入れられないでしょう。誰にも理解できないのですから。
これまでに人類は様々なものを作り出しました。その結果として農業革命、産業革命、情報革命という大きな社会革命を経験しています。そのいずれもがこれまで見たこともない、全く新しいものを1人の天才がつくりあげたのではなく、人類が積み重ねた知識、経験をベースに、多数の人間が関与し、あらゆる組み合わせを使い試行錯誤した結果生み出されたものなのです。
少し話が大きくなりましたが、店舗ビジネスにおいても、商品や業態開発の最初のステップとして顧客ニーズがベースになるのは当然としても、本当に重要なのはそこから先、つまり、関わる人がそれまでに積み重ねた知識や経験をどのように顧客ニーズに組み合わせるかでその成否が決まります。以下で具体例を考えてみます。
【既存業態と他業界を組み合わせてみる】業界を変えるだけで斬新なアイデアとなることも多々あります。自社、あるいは業界では当たり前のことが、他社、他業界では驚くほど新鮮に映り、問題解決策になることも少なくありません。ライザップなどはこの例になるでしょう。ライザップは中核事業として短期集中、担当トレーナーとマンツーマンで一気に成果を出すダイエットプログラムを提供しています。同様の仕組みを英会話やゴルフ、料理などで展開し、事業を拡大しています。
【既存の業態を組み合わせてみる】現在非常に勢いのある、いきなりステーキなどはこの例に入るでしょう。2013年、ペッパーフードサービスの創業者である一瀬邦夫氏が、セミナーで知り合った坂本孝氏が経営する「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」の立ち食い業態に興味を持ち、坂本氏に自分の構想(ステーキを低価格で提供すること、つまりステーキの立ち食い業態)を話したところ、薦められたことから生まれた新業態です(Wikipedia)。
【既存のメニューを組み合わせてみる】有名な例として、カツカレーが挙げられます。東京・銀座の洋食店グリルスイスで、プロ野球・読売ジャイアンツの千葉茂氏が「別々に食べるのは面倒だから」と注文したことがきっかけで誕生しました(Wikipedia)。たまたま生まれた商品ではありますが、この組み合わせは日本を代表するB級グルメとして、今や知らない人はいないメニューとなっています。
以上のように、組み合わせの仕方で起こる、化学反応とでもいうべき現象はすごいパワーを持っています。店舗経営者の皆さんもぜひ組み合わせを意識し、開発を行ってみましょう。
そこには必ず新発見があります。
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