社長が知っておかなければならない相続対策
当社は、同族会社と社長の財産管理(お金が残る仕組みづくり)実務の専門機関なので、様々な会社経営にまつわるお金の相談ごとが寄せられます。
お金の管理の方法から、金融機関対応や資金繰りの考え方、税務対策や部門別損益管理制度の構築など、実に様々な角度から会社経営にまつわるお金の悩みを解決するお手伝いをしておりますが、「お盆の時期」と「年末年始の時期」に数多く寄せられるご相談事があります。
ズバリ「相続対策」、それも「争族対策」に近いご相談です。高齢になった先代社長から、現社長への「自社株式」と「事業用不動産」の集約というシンプルなケースもあれば、親族で「自社株式」と「事業用不動産」を分散して所有しているのを集約するというケースもあります。
社歴の長い同族会社の場合は、一昔前の相続対策として「自社株式」や「事業用不動産」を当たり前のように親族間で分散した結果、収集がつかなくなってしまった…というケースが非常に多く見受けられます。
真にオーナー社長のオーナーシップを発揮するためには、「社長自身が他の株主から排除されるような不測の事態」を回避すべきです。事業用不動産に関しても、オーナー社長もしくは会社が所有していれば「突然、事業用の不動産を使えなくなるような事態」を回避することができます。
当社ではできる限り早い段階で「自社株式」と「事業用不動産」の集約をオススメしているのですが、その場合、スンナリ上手く進むケースもあれば、あたかも深く根を張った根っこをじっくり掘り起こしながら丁寧に進めていくようなケースもあります。
「自社株式」「事業用不動産」も、ほぼ価値がない二束三文のものであれば、特段モメるようなことは起きないものです。むしろ「持っていてもしょうがないから引き取ってくれ」と言わんばかりに「100%社長に集約」が実現するものです。
しかし、過去からの内部留保が厚く、株価計算上もそれなりの値が付くような自社株式の場合は、そう簡単に話は進みません。株価が高くなればなるほど、株主は自分の株主としての権利を自覚するようになってきますから、それを集約するためには、それなりの事前準備が必要なのです。
先ほど、「あたかも深く根を張った根っこをじっくり掘り起こしながら丁寧に進めていく」という表現を用いましたが、慌てて引っ張ろうとすると、言葉通り失敗してしまうのです。
自社株式に限って言うと、
「株価はどういう前提だと、どのぐらいの金額になるのか?」
「当事者間での売買や贈与・自社株式の買取は、現実的なのか?」
「種類株の活用・信託の設定など、第三の手法も検討したか?」
「どういうストーリーで説明するのが、最も理解してもらいやすいか?」
「相手側にとっての、真のメリットは何か?」
など、事前準備は段階に応じて多岐にわたります。
しかし、ほとんどの場合は、株価が安いとか高いといった側面でしか検討しないまま、相手側への配慮もなく、自分の都合だけで話を切り出してしまうのです。
特に、相手が高齢で収入がないようなケースだと、将来に対する金銭的な不安を抱えている場合もあります。その点を考慮し丁寧に話を進めていかないと関係をこじらせてしまいます。つまり、自分の金額的な損得勘定だけで進めようとすると、動くものも動かなくなってしまうのです。
株式や不動産を集約する側からすれば、できる限り安く集約したいと考えるのは当然ですが、それを良しとするかどうかは相手次第であるという大前提を忘れてしまってはいけないのです。経営者としての資質、社長としての覚悟を試されているのです。
ダイヤモンド財務®コンサルタント
舘野 愛
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