取り組む姿勢が成否を決定づける社長の「情報発信」―「考え方」を身につければ最強の武器になる―
私のコンサルティングについて、最初によく聞かれるのは
「私は文章を書いたり、じゃべったりするのは苦手だよ。私ができないときは、あなたが代わりに書いてくれるのかね?」
というものです。
この質問に対する私の答えは極めてシンプルです。
「いえ、私は一行も書きません。書き手はあくまでも社長です。そうでなければ全く意味がありません。」
相手の社長は「そうはいってもなあ・・・」といった顔をしています。「俺、書けないしなあ・・・」
社長もある程度の年数をこなし、業界の中でそれなりのポジションを得て役職などについたならば、例えば毎年行われる定期的な会合の挨拶文といったものは、事務方が用意してくれるのが普通です。その場合、その型通りの無難な挨拶を済ませて「はい、おしまい。」で、終わりです。そこには、何の社長らしさも主張も表現されてはいません。
私がお勧めしている、社長の「情報発信」を、それと同レベルに考えては全くお話にならない、ということです。
経営者が行なう情報発信というのは、自分で考え、自分で書き、自分でしゃべることが原則です。
その自分でできるようになるための源泉が、ずっと枯れることなく湧き続けるように援護射撃するのが私の役割なのです。
よく、
―おなかの空いた人に魚を与えても、それを食べてしまえば1回でおしまいである。また、お腹が空いたならば、同じように魚を与えなければならないことになり切りがない。しかし、その人に魚の「釣り方」を教えることができれば、自分で食べ物を調達できるようになり、一々人が与えなくても、ちゃんと生きていけるようになる。―
といったことを言います。
つまり、単発でただ「もの」を与えるのではなく、「やり方」を教えれば、人はずっと自分でなんとか道を切り開いて行ける、ということの例えとして、よく使われるお話です。
これは私に限らず、コンサルティングを生業(なりわい)にしているすべてのコンサルタントに、共通して言えることなのではないでしょうか。ノウハウやハウツーをかじるだけの勉強では、常に単発で終わってしまうということなのです。
特に、コンサルタントが提供するのは「モノ」ではないので、さらに深く考える必要があります。それは、先述した「やり方」を教えるだけでもダメである、ということなのです。コンサルタントの場合、更にその手前の「考え方」から入らなければならないのです。
コンサルティングというのは、まず「考え方」から入り、「やり方」を一緒に検討し、「何を」やるかまでも見届ける必要があります。
更にその「検証」まで付き合うのです。
このレベルまで踏み込んで、我々のコンサルティングは初めて実のあるものになるのです。ただ、その前にさらに大切なことがあります。
それは経営者の「姿勢」です。
「考え方」は入口としては大事ですが、そもそも向き合う「姿勢」がなければ、その「考え方」をコンサルティングするところまで行き着きません。「俺は、そんな風には考えたくない。」とおっしゃるからです。または露骨に「俺は、そうは思わないんだけどな~」という態度で、コンサルティングを受けることになります。これではほとんど成果は上がりません。
この「姿勢」に関しては、事前のセミナーを受けていただいたり、個別相談の場などで、最初にかなり突っ込んだ打ち合わせを行なうことになります。しかし、そこでどうしてもお互いの方向性が一致しない場合は、コンサルティングをお断りするケースも出てくることになるのです。
つまり「魚の釣り方を教えますよ。」と表明しているのに「黙って魚だけくれればいいんだよ。」と言われているようなケースです。これでは、話が建設的になることはありません。
コンサルティングがうまくいくかどうかは、なんとかして現状を変えたい、より良くなりたい、という情熱がいかに社長にあるか、にかかっています。
基本にそういった「姿勢」があって初めて「考え方」を整理することができます。続けて、「やり方」を決め、決めたことを果敢に実行してもらいます。そして、それを「検証」することで、反省し修正すべき点があれば素直にそれに向き合う、といったプロセスを重ねるのです。こうしなければ、現状が変わることはありません。
会社という組織も同様です。トップがやるべきことにそうやって向き合っていれば、やがて組織そのものも変わってきます。というか、組織はこの順番でしか変わりません。
現状ある課題に対してトップが何もしなくても、下の方からジワジワと改善される、といったことは絶対に起こらないのです。
良くも悪くもトップから変わっていかざるを得ないのが組織というものの宿命です。
社長はこのことを肝に銘じて、重要な課題解決のために、コンサルタントを戦略的に使いこなすことをお勧めします。
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