親子経営 「働き方改革」を順手に取る法
今回は後継者の役割と責任について考察してみます。経営者の子息、息女が父親の会社を継ぐべく入社してきます。父親である経営者は子息、息女に具体的に何をさせればいいのかと大いに悩みます。
今、会社に後継者を入社させてもやらせることがない、就けるポジションが無いなどと言う経営者に出会います。会社が現在順調に進んでいる場合、経営者である父親は今すぐ後継者が必要ではないので適当で当たり障りのない部署に就けようとします。
また、会社がいま不調で後継者どころの話でないという場合、経営者である父親は後継者を入社させても足手まといになるだけだと入社そのものを躊躇することがあります。よしんば入社させたとしても後継者の教育どころでなく放任状態になります。
いずれにしても折角得難いはずの後継者が入社したにもかかわらず後継者の活躍場所を見つけられないということが多くの会社で起こっています。では、後継者に何をさせればいいのでしょう、後継者に何ができるのでしょうか。
昨今、政府主導で企業に於いて働き方改革というスローガンの下、様々な動きがあります。非常に大まかで大雑把なスローガンなので各企業が現実に何を改革しているのかよく分からないところも多くあります。
聞くところによると、多くの企業でまず行っているのは残業時間の短縮、あるいは残業の禁止であると言われています。結果としてなにが起こっているかというと、表向き残業廃止を徹底するためタイムカードを強制的に定時に押させたり、定時以降のパソコンの使用を禁止したりしているようです。
実際には業務の質と量に何の変化も無いので結果として会社に隠れて仕事をこなすしかない状況になっていると聞きます。まことに何のための働き方改革なのかわけが分からないことこの上もありません。
本来、働き方改革とは何を目的としているのでしょう。ただ単に労働時間を短縮することが目的ではないはずです。厚生労働省の指針には意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題であると書かれています。
どこにも労働時間の短縮とは書かれていません。社員、一人一人が仕事により意欲を持つことができ、社員それぞれ能力を高め発揮できる職場環境を作ることだと書かれています。要するにそのような職場環境を作るためには日々の業務の改善、改革が必要だということになります。
企業は大きくなればなるほど組織病が充満します。日常業務のなかに多くの無駄が存在します。必要のない会議、必要のない書類、必要のない業務などたくさん散見されることになります。大きな組織になればなるほど似通った状況になります。
これら無駄な業務が社員の意欲を削ぎ社員の能力を鈍化させている主要な原因だと云えます。言い換えるなら業務を改善し業務を改革することが社員の意欲を高め社員一人一人の能力を高めることができるということです。
次代の経営を担う後継者にこそ、これら業務改善と業務改革を後継者の役割としてさせるべきだと考えます。後継者の下でプロジェクトチームを編成し推進させてみることも考慮すべきと思います。
もし後継者の下でこれらの業務改善、業務改革が為され、結果が出たとするなら、後継者の自信になると同時に社員の後継者への信頼が生まれることになります。そして社員の意欲が高まり能力が惜しみなく発揮されるなら業績のさらなる成長に大いに寄与するものと考えられます。
父親である経営者にとっても決して悪い話ではありません。後継者の育成が同時に為され、社員が活性化され、業績が上向くことになるわけですからこんないい話はありません。是非、今回の政府が進める働き方改革を逆手でなく順手に取って一石三鳥を追ってみてはいかがかと思います。
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