ヒットする商品は“二度生まれる”の法則
陽射しが強くなってきました。紫外線対策にサングラスをかける人が増える季節です。かつてサングラスといえばファッションアイテムのひとつ。海外セレブや芸能人など、特別な人が身につけるもの。今は一般化し「紫外線対策アイテム」です。身近な生活圏では、子育て中のパパやママたちがサングラスをかけてお散歩している姿があります。マーケットは拡大し、助っ人である祖父母世代をはじめ、幼い子供たち向けに目を守るケアアイテムとしても認知されています。ファッションから美容健康市場へリニューアルしている事例です。
わたくしの子も10年以上前、おもちゃのサングラスがお気に入りの時がありました。その頃は、今ほど一般化していない時代で、子供向けにはおもちゃのサングラスが主流でした。保育園児のわが子は、縁日で買ったレンズがピンクのサングラスがお気に入りでした。
はじめて、その玩具をかけて登園した朝のことです。緑の輝く季節、自転車の前かごに子を乗せ、いつものように登園です。風と共に走り、目の前には空には深いブルー、そして、ソフトクリームのごとく雲が吹き出していました。前かごでおとなしくしていた子が突然に、
ピンクに! せかいが、なってるぅ!!
と叫びました。確かに、子が言ってのけたよう「ピンクのサングラスをかければ、世界がピンクに染まる。レンズの色を変えれば、世界は変わる、ものの見方が変わる」。シンプルな原則に気づかされ、感じ入ったサングラスの想い出です。
ビジネスの話に戻りましょう。
先日、応援している酒造メーカーのイベント出展をサポートしました。昨秋から既存商品のリニューアルプロジェクトを進め、西日本でのお披露目となるイベントです。全国の蔵元と300名余の日本酒愛好家が京都のホテルに集まりました。会の主催である漫画家の先生に商品ラベルを作画していただいたご縁もあって、会場ではたくさんのお客様に声をかけていただきました。
日本酒は今、人気が復活し第三次ブームと言われています。海外からの注目度も高く、各社競い合って新商品がリリースされています。テイストだけでなく、日本酒のパッケージデザインも変化変容しています。例えばラベルデザインは定番の筆文字タイプから、今はワインラベルのような“きれいめデザイン”が増えてきています。日本酒女子と呼ばれる女性客も増え、“気分が上がる”華やかでオシャレな日本酒や、インテリアに映える雑貨感覚のデザイン性の高い日本酒が人気です。
今回プロデュースした日本酒は、あるお客様層にフォーカスした個性的なものです。味わいは伝統的なしっかりとした日本酒。ラベルデザインはモチーフに個性を持たせた独特のタッチで、昭和レトロテイストの仕上がり。モチーフの「面白さ」テイストの「温かさ」を感じる人もいれば、女子人気のきれいめ派からは「懐かしい(古風)」とも表現できる雰囲気です。モチーフに興味のない人には刺さらない商品、かもしれません。
リリースから約3ヶ月、販路を拡げてゆくプロセスにおいて、今まで出会ってきたお客様の反応は狙い通りのものです。例えば、大手百貨店では「チャレンジができない環境なので、従来通りの伝統的なラベルが欲しい」と。一方、前出のイベントではラベル画を手がけた漫画家のファンが大勢集まっており概ね好評です。4月に出展した東京でのイベントでは、海外からのお客様が多く、ラベルのモチーフが注目され、手にとって写真撮影をする姿が目立ちました。
大手百貨店は「保守」や「伝統」というレンズ、漫画家つながりのイベントでは「漫画家ファン」というレンズ、訪日客は「和テイスト好み」というレンズの眼鏡をかけていて、ひとつの商品でもまったく反応が異なることをリアルに感じました。お客様の、心にかけている眼鏡のレンズによって、商品の見え方が変わることを痛感しました。
わたくしは商品リニューアルを切り口にした商品戦略を得意とし、リニューアル商品でヒットをとばしたい、「売上アップを図りたい」というご相談をいただきます。中でも、今まで色々なコンテンツを購入されてきた経営者様のご相談がとても多いです。
売上アップのコンテンツを購入した時、人は「成果物が欲しい」または「成果物が無いと不安」といった潜在意識が働くものです。マーケティングをやる、調査をする、ツールをつくるなど「目に見えるコンテンツ」に時間とお金を投資します。一時的な売上があがることもあります。しかし、一年過ぎるとまた元に戻る。次のステージへ大きく飛躍にできない、また別のコンテンツやテクニックを探し「購入」、社内の雰囲気が悪くなる、というスパイラルに陥っていたりします。
この負のスパイラルを出る秘訣は意外とシンプルです。たったひとつ「しっかりと考える」です。ですが、考えることを避ける、またはその必然性に「気づけない」のが現実です。
わたくしの商品リニューアルコンサルティングでは「商品は二度生まれる」という原則があります。「考える」ことの体系化をします。商品リニューアルの根幹となるクリエイティブな仕組みを作り、ぼんやりとした思考をカタチにしていきます。これが第一の創造です。このクリエイティブプログラムでは、まだカタチのない商品の世界観を、天・地・人の観点から独創していきます。
ここで重要なポイントのひとつが「色眼鏡」を発見することです。己の色眼鏡、そしてお客様の色眼鏡を発見することです。この色のついたレンズこそ人の「心」であり、「市場は色のついた心によって作られている」ことから、プログラムがスタートします。子どもの「ピンクに、せかいが、なってる」というシンプルな真理を土台として仕組みを作ってゆきます。そして、第一の創造を経て、実体のある商品サービスを具現化。論理的に組み立て、社内でマネジメントできるようお手伝いします。マネンジメントは後、クリエイティブが先、というのが大原則です。
自社で囁かれる「もうこの商品は売れない」は、非常にもったいない言葉です。思考停止であったり、そもそも「考える」ことに気づいていなかったり、マネンジメントが先になっている場合、なかなか事業のステージは上がってゆきません。商品は二度生まれます。そして順番も大事です。この原則に従った仕組みづくりを意図して構築しているかどうか。アタマを整理するためだけにある「新しい地図」づくりに時間を費やすのはもったいないことです。
まず着手するべきことは、
何も描かれていない真っ白な紙を広げること
紙が何色に見えてるかを感じること
心の色眼鏡に気がつくこと
色んなレンズを試すこと
地図ではなくてコンパスを持つこと
どちらに進むのか「方向」を決め
フラッグをたてること
はじめは答えがない
かならずしもひとつの答え、とも限らない
組み合わせはいく通りもあるかもしれない
リニューアルした商品サービスを武器に、事業の進むべき方向性を見極めてゆきましょう。第一の創造をしっかりと体得して、商品サービスを通して伝えたい世界観を心高らかに独創してゆきましょう。
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